セゴレーヌ・ロワイヤル氏(53)は1981年ミッテラン大統領就任時にエリゼ宮技術顧問に抜擢され、ジョスパン政権で環境、教育、家族問題担当相を務め、2004年ポワトゥ・シャラント地方選挙で前ラファラン首相を破り女性初の地方圏議会議長に就任。 そして11月16日、社会党候補選出の党員投票で悠々と60.64%を獲得。ストロス=カーン元経済相(20.69%)、ファビウス元首相(18.66%)を足元にも寄せつけず、社会党初の女性大統領選候補に選出された。 2年前、党委員会にも予告せずにロワイヤル氏が大統領選への候補意思を公表して以来、党内の有力候補者らは彼女の野望にマッチョ的に水をさす作戦を続けた。が、候補意思満々だったジョスパン元首相からラング元文化相、オランド書記長までが彼女の超人気率に舌を巻き次々に候補を取りやめた。残った党内2大派閥、ファビウス氏とストロス=カーン氏を向こうにまわして闘ってきたロワイヤル氏。旧態依然の社会主義を掲げる前者は「子供の面倒は誰がみる?」と彼女を伝統的女性の位置に引き下ろす。社民路線を行く後者も彼女の経済・国際分野の未熟さを挙げては、彼女の足を引っ張るのに懸命だったよう。 三者討論会でも、ロワイヤル氏は彼らの、左右対立の伝統的イデオロギー論戦に対抗し、どこまでも「公正な秩序」をスローガンに「市民参加の民主主義」を掲げる。それだけでなく政治の審判役として「市民審査制」や「週35時間制の弊害」「非行少年の軍隊による指導」「通学区域制廃止」案など、与党UMP候補サルコジ内相顔負けの民衆受けする構想を披露し、党路線から大幅に逸脱する彼女にオランド書記長もたじたじ。 ロワイヤル氏は、オランド書記長と大学卒業以来同棲し4人の子供をもつ女として母として、「私は国民が望むことを実現していきたい」と、庶民の生活に密着した政治を志す。彼女をマドンナと呼ぶ者も多い。パリより地方での支持率が高く、ジョスパン政権がテクノクラート的政治で逃した旧支持層、庶民・労働者・女性たちの強い期待が寄せられている。ポスト68年世代のロワイヤル氏がフランス政治にルネサンスをもたらすか。 メルケル独首相、チリのバシュレ大統領、次期米大統領候補ヒラリー・クリントンと、フランスに女性大統領が生まれてもおかしくない。すでに仏経団連パリゾ総裁、仏国鉄イドラック総裁と女性勢が占めているのだ。 政治・経済、国際関係、宗教と男性が支配してきた分野に女性が進出していけば、世界はかなり変わるのではないだろうか。(君) |
|