The Host

 韓国でこの夏、歴代興行記録を塗り替えてメガヒットした『The Host』、邦題『グエムル・漢江の怪物』は娯楽超大作。しかしこの作品には「面白かったねー」だけでは終わらない深みがある。ソウルを流れる漢江(ハンガン)の河川敷でノンビリと休日を楽しむ市民を襲う大パニック! 突如出現し暴れまくる怪物君(どこか愛嬌あり)……ここで観光客相手に粗末な飲食店を営む一家(昔気質の父、ダメな長男と中学生の娘、アーチェリー選手の長女、IT産業で働く次男)が物語の芯になる。思わず「ギャッ」と叫んだり、爆笑したり、奇怪生物発生の背景を考えたり政治社会体制批判的なエピソードにうなずいたり、「闘う一家」を応援したりと盛りだくさんなのであるが、その底を流れる人間に対する眼差しのようなものが好きだ。
 それがポン・ジュノ監督の資質だ。処女長編『ほえる犬は噛まない』はシュールなコメディー、つづく傑作『殺人の追憶』は実在の事件を題材にしたシリアスドラマ、そしてこの怪獣映画、ジャンルを問わず彼の映画には必ず人間がいる。達観すれば可笑しくもあり哀しくもある人間がそこにしっかりと存在する。映画というメディアの特性を活かしきってそれを伝えてくれるスケールのデカイ監督だ。(吉)

●Borat, lecons culturelles sur l’Amerique
au profit glorieuse nation Kazakh
 自称カザフスタンのTVレポーター、ボラット氏のアメリカ横断珍道中。彼の下品で場違いな態度に各地で怒りと戸惑いが大噴出。だが彼の真の目的は、保守的&偽善的なアメリカ社会の素顔を引き出すトリックスターになること? そしてカザフスタンとして紹介されるルーマニアの町の風景に疑問を持たない無知な観客をも笑う。(瑞)