Pruneaux à l’armagnac
アジャンは、フランス南西部のロット・エ・ガロンヌ県の中心都市。フランス人に「アジャンの名物は?」とたずねると、そろって「干しプルーンpruneau!」と答えるだろう。なるべくふっくらと大きく、黒紫色がツヤツヤとしたものを選びたい。肉料理やタジンにもよく使われるが、今回はアルマニャックの風味が素晴らしいデザートだ。
干しプルーンは大きさにもよるが一人当たり5個。今回は6人分ということで30個、よく切れるペティナイフで二つに切り分け、大きな種をとりのぞく。
小鍋にアルマニャックを200ccとる。もちろんコニャックでもいいけれど、すでにどこか干しプルーンにちかい香りを持ったアルマニャックの方が合う。このレシピにはそんなに高くないアルマニャックで充分だ。そこへ砂糖を大さじ3、4杯加え、弱火にかける。砂糖が溶けるように絶えずかき混ぜ、沸騰してきたら干しプルーンを入れ、再沸騰しそうになったら火から下ろす。これをボールに移し、冷めたらきっちりとフタをして冷蔵庫に入れ、少なくとも丸二日は待ちたい。
冷たいままをカップにとり、干しプルーンの香りが移ったアルマニャックをかけただけでもおいしい。バニラアイスクリームとの相性も抜群だが、今回は甘みをおさえ、バニラ風味もつけないシンプルなカスタードソースcrême anglaiseを添えてみよう。
卵6個分の黄身をボールにとり、砂糖70グラムを加えてから、泡立て器を使って白っぽくなるまで混ぜ合わせる。鍋に牛乳半リットルをとり沸騰しそうになったら火から下ろし、卵の黄身と砂糖のミックスに流し入れる。よく混ぜ合わせてから鍋にとり、弱火にかける。木のヘラを使って絶えずかき混ぜながら70度を目指す。クリームがヘラを覆うようになり、指で書いた「一」文字が消えないようになったらでき上がり。煮え続けないように、冷水にさっとつけて余熱をとり、アルマニャック少々を混ぜ入れる。
カクテルグラスなどに干しプルーンをとり、すっかり冷えてとろりとなったカスタードソースをたっぷりかける。(真)
●pruneau
干しプルーンpruneauは、prune d’enteという種類の紫色のスモモを乾燥させたものだ。このプルーンは、12世紀半ば、十字軍に参加したアキテーヌ公によってシリアのダマスカスからもたらされたといわれている。現在は、ガロンヌ川に沿った町アジャンを中心に栽培され、毎年約5万トンの干しプルーンが生産されている。干しプルーンは、カルシウムやマグネシウムに富んでいるだけでなく、カロリー値も高い食品なので、17世紀から18世紀にかけて遠洋航海の旅に出た船乗りや植民者にとって、大切な常備食だった。
ウサギ、豚、七面鳥などの肉との相性がよく、これらの肉をローストする時などに、まわりにたくさん並べておくといい。モロッコでは、子羊の肉といっしょに煮込んでタジン(蒸し煮)にする。こんな風に料理に使う時ケは、薄目の紅茶に半日ほど浸してからの方がふっくらとしておいしくなる。ワイン煮に加えたりする時は、あらかじめ浸さなくてもいいだろう。デザートとしては、プディングやブルターニュ名物のファールなどに欠かせないし、フルーツサラダに入れたり、アーモンドあんこpâte d’amandesを挟んで可愛いつまみ菓子に使われたりもする。
●pruneaux au bacon
レセプションなどでオードブルとしてよく出てくる干しプルーンのベーコン巻きを作ってみよう。干しプルーンにタテに切り口を入れて種をとり出す。種を取り出したあとに、薄皮をむいたピスタチオを入れたりしたらパーフェクトだけれど、そこまで凝らなくてもいいだろう。薄く切ったベーコンを半分に切ったものでこの干しプルーンをくるりと巻き、楊子で止める。これをオーブン用の天板にきれいに並べ、200度以上に熱くしておいたオーブンに入れる。8、9分してベーコンの脂が溶け出すような状態になったらでき上がり。熱々をサービスしよう。