美容整形が常識化しつつある今日この頃、やはりどうしても目にとまるのが女優の皆様。シリコン、リフティング、ヴォテックス、テクは色々あれどやっぱり何処か不自然。少数派の「してない組」が逆に注目されたりして…。代表格は、オゾン作品で大復活を遂げたシャルロット・ランプリング、同じオゾンの最新作『Le temps qui reste』のジャンヌ・モローの堂々たる老けっぷりもあっぱれだ。 『Le Petit Lieutenant 新米刑事』も年齢を偽らない女優、ナタリー・バイがあって初めて成立した映画だと思う。警察学校を卒業したての新米刑事(売れっ子、ジャリル・レスペール)と、アル中を克服して復職して来たばかりのやり手女刑事(N・バイ)のドラマ。自分の下に配属させた新米を何気なく可愛がる女刑事が昔の恋人にある日ふと告白する「生きていれば息子はあの位の年齢だわ」…。担当した事件の捜査途中、ほんのちょっとした間の悪い人為的ミスで新米が致命傷を負う。傷心の女刑事は弔い合戦に挑み、犯人を仕留める。物語は、まあこうなのだが、職務上そして心情的に、犯人を射殺してしまった彼女が、独り海岸を歩くラストに感動する。その彼女の顔に人生が刻まれているから感動的なのだ。 加齢は宿命、それを美しいなどと欺瞞に満ちた言葉で形容する気はないが、人生の年輪は、人の心を打つものである。そのことが美しいとは言える。 監督のグザヴィエ・ボーヴォワは、どちらかというと「私」映画を手がけてきたが、今回は自分の世界を離れて、刑事物というジャンル映画に挑んだ。二人のドラマを包む警察の日常がリアルに描かれる。今年ヒットした『36 quai des orf竣res』もそうだが、フランス伝統のフィルムノワールが復活の兆し?(吉) |
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●Une partie de Campagne 『大いなる幻影』などで知られるジャン・ルノワール監督の最高傑作と謳われている中編が『ピクニック』。父母、いいなずけのアナトールと、パリからはるばる川沿いのレストランまでやってきたアンリエット。鳥のさえずり、水の流れ、草の匂いに酔ってしまう。そして土地の色男アンリに言い寄られ、行きずりの愛。日が陰り雨が川面を打つ。それから数年後、アンリエットは、今は夫となったアナトールといっしょに戻ってくる。昼寝する夫を置いて、一回きりの愛を交わした場に戻ると、アンリがいる。「よくここに来るんだ」とアンリ、「私はここでのことを毎晩思い出しているのよ」とアンリエット…。おまけでは、この作品について〈カイエ・ド・シネマ〉誌の当時の若手評論家たちが討論しているのが面白い。(真) |