EU憲法条約批准のための仏国民投票が5月29日に迫っているなかで右派、左派とも賛成派と反対派が対立。4月1-2日の Harris調査では反対54%(左派58%、右派33%、極右80%)と賛成派(46%)を上回っている。この調子でいくと、フランスが先頭に立って進めてきた同条約を国民が拒否することになり、フランスはEU建設国としての座を退くだけでなくEU憲法もお蔵入りに…と、シラク大統領もオランド社会党書記長もそれぞれの陣営内反対派の説得に必死だ。 自由主義経済に反対する極左や共産党、一部の社会党員らは、EU憲法(58年ローマ条約以降の各条約を集約し、EU大統領・外相設置など)それ自体への反対よりも、シラク-ラファラン政権下の失業増加や購買力低下への見せしめ的不満票を突き付けるよう。エマニュエリ社会党員などは、同条約を認めることは、1940年、ペタン将軍に国民が全権を認めたのと同じと、過激な比較論をふりまわす始末。オランド社会党書記長がシラク大統領やサルコジ与党UMP総裁と同調し、同じ穴のムジナと化しているのも左翼反対派には胸くそ悪し…。 こうした論争のまっただなか、欧州委員会のボルケンシュテイン委員(オランダ人リベラル派)が最近、2000年リスボン理事会で再確認された「カネ・モノ・ヒト・サービス統合」の中のサービスに関する要網を発表したものだから火に油を注ぐことに。 25カ国拡大EUの総生産の中でサービス業は70%を占め、米中の経済に対抗するためにはサービスの統合が不可欠だという。さらに同要網には「派遣国の労働条件保持」とある。たとえばポーランドの会社がフランスのあるホテルに職員を派遣した場合、給与も労働時間もポーランドの条件(最低給与月170euros、週42H)が適用される。仏国内に設立される外資企業はフランスの労働規約を守らなければならないのだが、上の例のようにホテルから通信、医療、法務関係、広告、教育…修理業まで全サービス業界に、EU東欧諸国から安い就労者が自国の労働条件で流れ込んでくることになる。 同要網にシラク大統領は激怒しその見直しを要求、当分保留事項となる見通し。が、反対派はEU憲法論争にサービス統合という薬味を混ぜ合わせ、心憎くもボルケンシュテイン委員をフランケンシュタインと呼ぶのだから扱いにくい。EU憲法問題が国内問題にすり替えられるとは予想だにしなかったシラク大統領、その批准ため国民投票を選んだことを後悔しているのでは…。(君) |
|
|
||
|