フェリー二を始めとするイタリア映画の歴史に欠かせない二人の女優が現在パリで舞台に立っている。 まずはテネシー・ウィリアムスの戯曲『青春の甘き小鳥』(1962年に映画化された時の題名は『渇いた太陽』)で、映画スター役を演じるクラウディア・カルディナーレ。1971年にサガンの翻訳によりフランスで初演されたこの舞台作に、今回はフィリップ・アドリアンが新しい翻訳で演出に臨んでいる。 ブッシュ大統領を思わせる政治家フィンレーの偽善的活動にはほとんど触れず、幼なじみである政治家の娘との恋を成就させようと故郷に舞い戻るチンピラと、映画スターの関係に焦点が置かれ、米国南部ルイジアナの熱く乾いた空気が少しも感じられないのが少し残念だ。 |
![]() 火-土21h、土マチネ18h、日15h。
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対するはステファン・ツヴァイクの戯曲『La dette(借り)』を演じるマガリ・ノエル。医者の妻として平穏な生活を送る女が、静養のためとアルプスの麓にある小さな宿に独り滞在する。ところが宿の食堂で、娘時代にあこがれて胸を焦がした舞台役者と偶然再会する。小さな村で「狂人」として敬遠されている役者への「借り」を返すため、今度は女が芝居を打つ番に。 ツヴァイクの戯曲としては、あまり目立たない小品だけれど、いつまでも少女らしさを失わないノエルの演技、対するJ-P・ベルナールの存在感、そしてよく練られた演出(ディディエ・ロング)と舞台装置で、思いがけず逸品に出会った喜びに心が満たされてくる。(海)
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![]() “Doux oiseaux de jeunesse” Thatre Madeleine : 19 rue de Surene 9e 01.4265.0709 “La dette”(5月1日迄) |
DANCE | |
●Josef NADJ “Poussiere de soleils” ジョゼフ・ナジは、これまでにもカフカ、べケット、ボルヘスなど彼の愛読する作家に作品を捧げてきたが、今回はレイモン・ルーセルへのオマージュ。彼ならではの「ヴォイツェック」は東京でも公演され、ダンスのみならず演劇愛好家のファンも多い。 旧ユーゴスラビア生まれのハンガリー系。80年代始めはパリに、現在はオルレアンに拠点を置いている。出演、振付、演出のかたわらデッサンを描き続け、彫刻や写真でも表現する彼の内面の世界は、演劇的、されど言語によるものではなく「人々」としての存在、動作に表される。どこか郷愁を感じさせるそれは一見叙情的な具象表現のようだが、常に神秘に溢れた「内面の露出」を見せてくれる。(珠) |
![]() 19日~26日/20h30、24日/15h (21日休演)。17€/26€。 Theatre de la Ville : 2 place du Chatelet 4e 01.4274.2277 |
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