Gâteau au chocolat amer
「 マコトさん、バレンタインデー用に、例のチョコレートケーキ書いてくれるはずだったのに、忘れたんでしょ!」と友人にひどく怒られてしまった。来年だってSt-Valentinはやってくるんだし、彼の誕生日にだって作れるし、と忘れないうちに紹介。これまでチョコレートケーキを何度か書いてきたけれど、これが決定版です。
直径23センチ、深さ5センチほどの型にバターを塗って冷蔵庫に入れておく。
有塩バター150グラムはさいの目に切ってから大きなボールに入れ、室温にしばらく置いておく。チョコレートを細かく割ってからボールに入れて湯せんにかけなめらかになるまで溶かす。卵4個は黄身と白身に分け、白身は固く泡立てておく。オーブンの目盛りを180度に合わせて点火。
柔らかくなっているバターに砂糖を加えて混ぜ合わせる。ちょっと力がいるだろう。ここへ溶けたチョコレートを加え、丁寧に混ぜ合わせる。さらに卵の黄身を1個ずつ、次にあらかじめふるいにかけておいた小麦粉とコーンスターチも混ぜ入れる。最後に泡立てた卵の白身を加えるのだが、泡がこわれないように大きく優しく混ぜ合わせたい。
型に生地を流し入れ、オーブンへ。オーブンの目盛りを150度に落として30分ほど焼けばできあがりだ。台所にチョコレートの芳香が満ちてくるだろう。
10分ほど待って型からはずしましょう。熱すぎたり冷めてしまった状態では、型から外すのは至難の業です。
しっとりとした口当たりだけれど重たくなく、バターのかすかな塩味がチョコレートのうまさを引き立てている。もう少し甘い方がいいという人は、チョコレートでコーティングすればいいでしょう(右欄参照)。カスタードソースを添えたりしたら最高! こんなケーキには、まろやかなボルドーの赤ワインなどが合うことも、覚えておきたい。(真)
チョコレートchocolat amer 200g、卵4個、砂糖120g~150g、バター150g +型用に20g、小麦粉50g、コーンスターチ20g
●glaçage au chocolat
ケーキを、チョコレートや砂糖の衣で覆うことをglaçage という。チョコレートを溶かして覆うだけでは、乾いたときにツヤがなくなるので、生クリームやバターを加えるのがふつう。いちばん簡単なのは、湯せんにかけて溶かしたチョコレートにその半量のバターを加え、少々冷ましてから、ナイフなどを使ってケーキを覆うやり方。今回のケーキならチョコレート100グラムに対してバター50g。このコーティングはカロリーが高いので、なるべく薄めにケーキを覆うことです。
●beurre demi-sel
バターは大きく、無塩beurre douxと有塩beurre demi-selに分けられる。バターを多用するブルターニュ地方では、バターといえば有塩バターと決まっている。単にバゲットパンに塗って食べるときにも有塩バター。うまさが違う。最近は〈ゲランド産の塩使用〉と明記された高級品も市販されている。
●クレーム・アングレーズ
チョコレートケーキにはcrême anglaise(カスタードソース)が合う。
バニラビーンズ1本を縦割りにし、中の種を丁寧にかき出す。鍋に牛乳半リットルをとり、バニラの種とさやを入れ、香りが出るように沸騰させてから冷ます。バニラのさやをとり出す。
卵5個分の黄身をボールにとり、砂糖200グラムを加えてから、泡立て器を使って、白っぽくなるまで混ぜ合わせる。ぬるくなった牛乳を加えて混ぜ合わせ、弱火にかける。木のヘラを使って絶えずかき混ぜながら70度を目指す。沸騰させると卵と牛乳が分離してしまうので、表面がきめ細かい泡で覆われるようになったら要注意。クリームがヘラを覆うようになり、指で書いた「一」文字が消えないようになったらでき上がり。煮え続けないように、冷水にさっとつけて余熱をとります。温かいケーキには温かいまま、冷たいケーキには冷ましたものを添える。
●palette
ボールでチョコレートケーキ用の生地などを用意して、型に流し込もうとする時、ふつうのヘラでは、ボールにどうしても生地が残ってしまい、じつにもったいない気がしてしまう。そんな時にパレットと呼ばれるヘラがあると便利だ。ヘラの部分がゴムになっているので、ボールや鍋の曲線に合わせて、柔軟にしない、きれいに生地がすくいとれてしまう。そのかわり、ボールにくっついている生地を指でかき集めて味わうという、素晴らしい楽しみはあきらめるしかないので、子供たちは不満顔。(真)