Tian d’agneau provencal
ローストは多めに作った方がおいしくできる。そして翌日、そんな肉が300グラムほど残っていたら、子羊、豚、子牛、トリ、カモ…なんでも構わないから、この南仏の香りいっぱいの一品を作ってみよう。わが家には子羊のもも肉が残ってる!
まず肉をほぐしたり切り分けたりして食べやすい大きさにする。
トマト4個は、10秒ほど熱湯でぐらぐらさせたら冷水にとり、皮をむく。二つに割ってから2、3ミリの厚さに輪切り。クルジェットとナスも2ミリに輪切り。
大きめのフライパンにオリーブ油をとり中火にかける。まずクルジェットを重ならないように並べ、一度ひっくり返して、両面に軽く焼き色がつくまで炒めていく。塩、コショウし、クッキングペーパーの上にとる。ナスも同様に炒めます。
オーブンの目盛りを170度に合わせ点火。
長さ26センチほどのグラタン皿に、ハケでオリーブ油を塗り、半分に切ったニンニクをまんべんなくこすりつける。
底に肉を敷き、残っている肉汁も大さじ3杯ほどかけまわす。
その上に、トマト、クルジェット、ナス、トマト、クルジェット、ナス、トマト、と縞模様になるように、少しずつ重ねながら並べていく。その上から、新鮮なタイムの花や葉を散らし、オリーブ油を振りかけ、熱くなっているオーブンに入れる。肉もクルジェットもナスもすでに焼いてあるので、トマトが軽く焼きあがり、全体の味がなじめばいい。20分から25分で充分だ。
オーブンから出し、細く刻んだバジリコの葉をたっぷり散らせばできあがりだ。
残り肉がないときは、カモのコンフィを温め直してからほぐして使えば、同じようにおいしくできる。
ワインはプロヴァンス産のきりりと冷やしたロゼがいいだろう。(真)
ローストした子羊や子牛肉の残り約300g、トマト中4個、小さめのクルジェット2本、小さめのナス2本、ニンニク1片、新鮮なタイムの花や葉少々、バジリコ、オリーブ油、塩、コショウ
●クルジェット courgette
クルジェット(ズッキーニ)は、以前は地中海の名産だったが、現在はパリ近郊でも栽培され、一年中八百屋の店頭に並んでいる。皮の色が濃いもの薄いもの、縞が走っているものとさまざまな種類があるけれど、皮にツヤがあって、なるべく小さめのものを買うこと。大きくなると、種が成長し、味もめっきり落ちる。
炒めたり、揚げたり、ラタトゥイユのように煮込んだり、いずれの場合も皮をむく必要はない。魚、子羊、子牛肉の料理に欠かせない付け合わせになるだろう。テンプラもうまい! もともとが地中海の野菜だけに、ニンニクやタイム、バジリコの香りとよく合う。
●tian
ティヤンは、プロヴァンス地方で用いられる陶製の浅い焼き皿。ふつう正方形か長方形。この焼き皿を使って作った料理もティヤンと呼ばれる。ふつうさまざまな野菜の薄切りを積み重ね、オーブンで焼くことが多い。パリのレストランのメニューでも、最近tianという記述が流行だが、料理の内容よりも、食材を重ねて小さなタルト状にしたものを指すことが多い。
●confit
コンフィconfitというのは、カモやガチョウの肉、あるいは豚肉などを塩漬けにしたあと、たっぷりの脂で時間をかけて煮込み、その脂ごと壺や瓶などに漬け込んだもので、フランスに古くからある肉の保存法のひとつだ。温め直すだけでおいしく食べられるので、常備しておくといろいろと便利。fruits confitsはオレンジやアプリコットなどの果物の砂糖漬けのこと。citron confitは、マグレブ系の人がタジンなどの料理に加えるレモンの漬け物。oignons confitsやpoivrons confitsというのは、タマネギ、赤ピーマンをくたくたになるまで火を通して煮詰めたもので、焼き肉や焼き魚などに添えるのが、ビストロなどでよく目にするようになった。
●OUTIL|couteaux
「スーパーでフランスの包丁を買ったけれど、切れない」とこぼす人がいるが、ステンレス製だからです。パリ1区の〈Rue Coquilliere〉などにあるプロ用の店では、鋼製の、背筋が寒くなるような切れ味の包丁を売っている。まず手に入れたい一丁は、刃渡り20センチほどのcouteau éminceur(couteau chef)。25euros前後。肉を切ったり、野菜を切ったりと万能の働きぶり。もう一丁というのなら、野菜の皮をむいたり、形を整えたりなど仕事に向いているcouteau d’office(ペティナイフ)。15euros前後。