地下鉄のアンペール駅に向かって歩いていて、Cha Yuanを見つけた。中国のお茶屋のごとく赤い茶缶が並び、芳香がただよう。中国の白茶Bai mu Danを味わう。美味! 心が安まる。 ご主人のナディーヌ・ベコーさんは、20年来、中国をくまなく回り、その年の銘茶を買い付けている。地下鉄コルドリエ駅近くにAnticipationというレストランがある。メニューを一瞥しただけで、リヨン名物の脂っこいアンドゥイエットやソーセージとは一線を画していることがわかる。「トリの取り合わせと野菜のガスパチョ、カリッと焼いた子羊とアンディーブのコンフィ…」。一品の中にこれだけの味を盛り込む腕前に驚嘆。シェフのロジアックさんは、『ゴーミヨ』からも推薦されているが、彼が新しい味を追求していることは、中国の百合風味のプロンビエールとかタバコ風味のアイスクリームといったデザートにもうかがえる。 夜は、ソーヌ川沿いを美しいテロー広場のあたりまで散歩。リヨンは夜になると美しい。あたたかく柔らかい照明に浮かび上がり、僕は、クロアチアの首都ザグレブの小さな通りを思い出した。翌日は、サン・セバスチャンの長い坂道を歩いてラ・クロワ・ルースを登った。登るにつれて、右手にリヨンの街並みが180度の眺望で広がっていく!左手にはくすんだような小さな通り、ポスターが所狭しと貼られたカフェやライブハウスが並ぶ。階段を子どもたちが走り回っている。とても庶民的な雰囲気だ。
ラ・クロワ・ルースの一番高いところに着くと、そこの大通りに市場がある。フランスではほとんど見かけなくなった臓物屋がある。話を聞くと、やはりリヨンで最後の臓物屋とのこと。
子羊の舌、子牛や子羊の心臓…子羊の睾丸まである。少し下っていくと、リヨンの伝説的な traboules の入り口がある!巨大でどう表現していいかわからないような階段に面した建物の、とても広い中庭から始まっている。「青いライオン印の黄色いプレート」を目印にしながら、階段を下りて行くと、狭い通路を歩きながら、建物の下を抜けて行くことになる。ル・コルビュジエが思い描いていたものよりは、はるかに美しく庶民的だ。しばらく下ると通りに出る。このトラブールは、素晴らしい発想だ!この丘に住む人たちを結びつけるために、彼らの建物の間に通路を造るとは、なんてシンプルでいながら創意工夫に満ちた手段だろう!
リヨン市民の生活に少しでも近づきたいと願っていた僕だったが、今は、大きな滑り台を滑っていく少年のごとく、そのど真ん中にいる。10分でテロー広場に戻ることができた!
(alex/訳:真))