これが意外に面白い。 Moi! Autoportrait du XXe siecle

 20世紀の画家たちの自画像を集めた展覧会、というと、「寄せ集めか」と思いがちだが、これが意外に面白い。
 メキシコのフリーダ・カーロのように、多くの自画像を通して自分史を語る画家もいるが、これは例外。通常、作品中に自画像が占める割合はかなり少ない。だから、自画像は、作品の後ろに隠れた画家の「自分に対する思い」を想像できる稀少な機会だ。
 エコール・ド・パリの画家キース・ヴァン・ドンゲンは、海の神ネプチューンに扮した。仮装パーティーが大好きだったこの画家が、よりによって海の神として自分を描き、背景に現代の船を添えた裏には、大航海時代に世界の海を渡ったオランダ人の、20世紀の末裔である自負が垣間見える。
 ノーマン・ロックウェルは、鏡を見ながら自画像を描く自分を残した。制作中の画家は眼鏡をしているが、中は空白で眼は描かれていない。しかし、描かれたのは眼鏡なしの素顔だ。制作中の自分は見せられない。できた作品で私を判断してくださいよ、と言っているかのようだ。
 ヌードには自己陶酔や自我の強さがもろに出る。シュザンヌ・ヴァラドンの64歳のときのヌードは、黒々とした髪で、身体も若い。晩年の彼女の写真には白髪が写っているが、この自画像にはそれがない。それに対し、アリス・ニールは、張りを失った80歳の裸体を鋭い眼光で見つめている。
 同じ画家の、制作年の違う作品2点を並べて展示したコーナーも、見どころが多い。家族と自分を描いたモーリス・ドニの1916年と1921年の作品。場面も画家もほとんど変わっていない。けれどもよく見ると、1916年に赤ん坊だった子どもが、5年後には成長している。1916年の作品で赤ん坊を抱いていた女性は画家の妻。ドニは1919年に彼女と死別し、1921年には別の女性と再婚している。妻が代わっても家族の風景は同じ。アニエス・ヴァルダ監督の映画「幸福」を彷彿させる作品だ。パウル・クレー、フランシス・ベーコンのように、お馴染みの作風で自画像を描いている画家もいて、作風から名前を当てる楽しみもある。(羽)


Musee du Luxembourg :19 rue de Vaugirard 6e
火水木土日/10h-19h 月金/10h-22h30


Lotus Rouge

  ここ数年絵本の世界で飛躍的な人気を持つチャンホン・チェン(陳江洪 Jianghong CHEN)。彼のギャラリー “lotus Rouge” では、画家としての彼本来の作品を見ることができる。
 1963年中国天津生まれ。北京芸術大学在学中に描かれた数千枚におよぶ墨絵のデッサンからは強靭な洞察力と描写力がうかがえる。’87年よりパリを起点にロンドン、NY、LA、ベルリン、香港と世界中で作品を発表。
 最近の、墨とアクリルで表現される大きなサイズの抽象画には、限りなく東洋を感じさせながらも西洋が混じり合い、チェンの軌跡が込められている。「古」のようでも「新」のようでもあるが、彼が表現する時と場所の融合は、実にモダンな形となり我々の心に強く響く。また、彼が平行して十数年来続けている和紙や絹布の墨絵シリーズは、中国の記憶、自然、エロスなど、さまざまなモチーフが描かれ、添えられた自身の詩とともに、懐かしく、心地よく、時には強烈なメッセージが見いだせる。
 ここはチェンの制作場でもあり、運がよければ彼が筆をもっているところを訪ねることができる。(久)

日休14h-19h
103 rue Quincampoix 3e 01.4459.3260


●17世紀オランダ画家展
レンブラントからルイスダール、ステーン他の作品約140点。
5/16迄(13h-19h月休)
Institut Neerlandais :121 rue de Lille 7e

●L’Avant-garde hongroise
1910~40年ブダベストを中心とした前衛作家約10人の60点。5/29迄
Galerie le Minotaure : 2 rue des Beaux-Arts 6e

●Marc Riboud(1937-)
1950年代のフランスから発し、以後カルチエ=ブレッソンの跡を追うようにリブーが歩んだ世界50年の歴史を刻む写真約100点。6/6迄(月火休)
Maison europeenne de la photographie :
5 rue de Fourcy 4e

●Au cマur de l’Impressionnisme
マネやドガ、モネ、コローら印象派画家やマラルメとも交友のあった美術愛好家の実業家ルアール(1833-1912)家のコレクション。6/13迄(月休)
Musee de la Vie romantique:
16 rue Chaptal 9e

●Les coloristes ecossais
仏スコットランド協商条約100周年を記念し、スコットランド色彩画家と呼ばれるCadell、Hunter、Peploe、Fergussonら4人の1900~1935年代の作品約80点。6/26迄(月休)
Mona Bismarck Foundation :
34 av. de New York 16e

●Francis BACON(1909-92)

アイルランドに生まれ、同性愛ゆえに家族に勘当され、独学で、孤独と不安を表現していったベーコン。自画像とも評される1933年作「磔刑図」を始め、「法王」シリーズやデフォルメされた人物像、80年代までの約45点。
6/30迄(火休)
Fondation Dina-Vierny-Musee Maillol :

61 rue de Grenelle 7e

●Montagnes celestes

唐王朝から宋、明朝まで僧侶や文人が描いた南宗画と呼ばれる山水・花鳥画や、写実主義を極めた院体画(宮廷画院画家の作品)など、千年にわたる中国山水画展。6/28迄(火休)

Grand Palais : 3 av.du Gal. Eisenhower 8e

●Dante et Virgile aux enfers

ドラクロワは24歳でダンテの『神曲』をテーマに「地獄のダンテとウェルギリウス」をサロンに出品。デッサンや習作、他の作品や同作品に触発されたロダンの彫刻なども展示。別会場にてスペイン人画家Miquel BARCELO(1957-)の「神曲」シリーズから5月は「煉獄」、6月は「天国」を扱ったデッサンと水彩画。

いずれも7/5迄

(火休)

ルーヴル美術館:Sully翼/Denon翼