●Lost in Translation ウイスキーのCM出演のために来日したスター(ビル・マーレー)と、カメラマンである夫に付き添って来た女の子(スカーレット・ヨハンセン)。彼らは滞在中のパークハイアット地上X階のバーで顔見知りになる。異国の地で孤独と退屈を持て余すふうだった二人は、やがて “丸ごとディズニーランド都市” TOKYOで遊ぶ共犯者に。クラブハウス、カラオケボックス、ゲームセンターの光と影と雑音、時差とアルコールと聞き慣れない日本語。それらは頭をクラクラさせ、夢うつつの世界に誘う。そう、本作は「覚めてほしくない夢」に似ているのだ。そして当然、夢はいつか覚めるもの。二人には元の生活が待っている。だが悲しくなんかない。私たちはこんなちょっといい夢の記憶に支えられて、明日も生きてゆけるのだから。(瑞) |
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●21 Grammes 長編第一作『アモーレス・ペロス』で注目を浴びたイニャリトゥ監督。早くも今回、祖国メキシコを飛び出し、ショーン・ペンらの実力派俳優と組むためアメリカに渡った。だが〈交通事故を軸に複数の人生が交錯する〉のは前作同様。ひき逃げ事故を介し、加害者、家族を失った女性、被害者の心臓を移植された男の日々が、雄弁な手持ちカメラで描かれる。時間軸は無視され、登場人物たちの姿が無秩序につなげられる。そして映画が進むうち、彼らの運命のジグソーパズルが完成する。俳優陣が素晴らしく、運命にもがく人々の姿に説得力があり、見ていてショーン・ペンではなく、こちらの心臓が痛くなってくるほど。見る価値のある作品だが、落ち込んでいない時に是非どうぞ。タイトルの「21グラム」とは人が死ぬ時に失う魂の重さ。(瑞) |
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● 映画館L’Ecranでの映画祭 4年目の今年は、テーマEnsembleを出発点に「人はなぜ一緒に生き、なぜ互いを我慢しあうのか?」「なぜ大勢で行動し、何が彼らを動かすのか?」と問いかける。プログラムに1965-75年にかけての作品が目立つ。この時代には人々が今よりもっと「一緒に」行動していたことを反映している。1970年代初頭の日本を描いた、ヤン・ルマッソンとベニ・デスワルト(2週間前に急逝)のドキュメンタリー『鹿島パラダイス』(1972/上映後ルマッソンとの座談会)、ゴダールがジガ・ヴェルトフ集団と撮った『Un film comme les autres』(1968日本未公開)など…。お見逃しなく。4日~10日。(海) |
*L’Ecran : 14 passage de l’Aqueduc 93200 Saint-Denis 01.4933.6688 M。Basilique de Saint-Denis |
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