Soupe de topinambours
最近、トピナンブールtopinambour(キクイモの塊茎)を八百屋の店頭でよく見かける。キロ2.50ユーロ前後でそれほど高くない。ボクは、皮をむいてから縦に四つに割って、落花生油で強火で唐揚げにし、唐辛子粉をまぶしライムを搾りかけるアフリカ風が大好き。ちょっと甘くてほろ苦く、乙な味。ビールのおつまみに最適だ。
寒くなったので、きょうはスープを作ってみよう。これは英国のレシピ本(「台所の本」参照)で覚えた一品で、なぜかパレスチナ風スープという。でも味はきわめてヨーロッパ風。ちなみにトピナンブールは英語ではJerusalem artichoke(エルサレムのアーティチョーク)という。500グラム、皮をむいて小さく切っておく。
玉ネギ中2個とセロリの茎2本をみじん切りにし、大さじ2杯のバターで炒める。火は中弱火。玉ネギが透明になったら、ベーコンの薄切り2枚をみじんに切ったものを加える。トピナンブールの味は繊細なので、燻製されていないものだったらベストだ。しばらく炒めたらトピナンブールを加え、トリガラからとったスープを1リットル加える。野菜が柔らかくなったら、全体をミキサーにかける。
ここで、トリガラのスープをさらに半リットルほど加えながら、好みの濃さにする。こってりとした味が好きな人は、生クリームやバターを足してもいい。沸騰直前になるまで熱くしたら、パセリを散らして食卓に。スープ鉢soupièreに入れて食卓に出す時は、スープ鉢を熱くしておくことが肝心です。クルトンを添えましょう。
どこまでもクリーミーで、マロンあるいはアーティチョークを思わせる風味がユニーク。「これなんのスープ?」と家族やお客さんの目が好奇心で輝くことでしょう。(真)
●台所の本|Jane Grigson『English food』
イギリス料理のバイブルです。フランス人はイギリス料理というと顔をしかめるけれど、この一冊に出ているレシピを一つ、二つと作っていくと、そんな偏見も吹っ飛ぶに違いない。オックステールスープ、キドニーパイ、子羊の煮込み、ウナギのシチュー、ハドックのマスタードソース添え、ニシンのパイ、アプリコットとアーモンドのクランブル、ジンジャーブレッド…。
いつか、ヨークシャープディング付きローストビーフを作って紹介したい。英語も分かりやすく、ちょっと辞書を引けば大丈夫です。(真)
●トピナンブール topinambour
ロバート・B・パーカー著『晩秋』(菊池光訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)の中で、傷ついたスペンサー探偵が追っ手を逃れながら森の中をさまよっている。「沼地の縁でキクイモを見つけて一本抜き、根についているイモのような塊茎を切り取り、皮をむいて食べた。生のジャガイモを食べるような感じだが、味は劣る」という具合にトピナンブールが登場するが、食通スペンサー探偵の点はちょっとからいようだ。
1613年にブラジルから6個のトピナンブールがフランスに渡来し、宮廷に届けられたという。それ以降、フランス各地に広まったが、ジャガイモには勝てず次第に忘れられてしまい、一部の食通が冬のスープやピュレにして味わうのみになっていた。ところが、最近になってふたたび人気を取り戻している野菜です。
ジャガイモ同様に、揚げたり、グラタンにしたり、ゆでてから皮をむいてサラダにしたり、マッシュしたり、いろいろに調理して、この野菜を発見したい。
●ホタテ貝とトピナンブールのソテー
4人分として大きめのホタテ貝を8個用意する。貝柱noixと赤身corailのところだけを使います。冷凍ものなら、牛乳にひたしてゆっくり解凍。貝柱と赤身を切り離し、貝柱は一つを4枚くらいに薄く切っておく。トピナンブールは400グラム、皮をむいてから、千六本に切る。
フライパンにバターを大さじ2杯とり、まずトピナンブールをゆっくりとソテーしていく。6、7分ほどでやわらかくなりかけたらホタテ貝を加える。白ワインを大さじ4杯ふりかけて、塩、コショウ。1分たったら赤身を加えて、もう1分。熱くしておいた大皿に盛りつける。フライパンに残った煮汁は、さっと煮詰め、塩味を調え、レモンの搾り汁と刻んだパセリを加え、ホタテとトピナンブールの上からかければでき上がり。こんな繊細な料理には、シャブリやサンセールのような上等の白ワインを開けたいところだ。