静かなパリの夜、黄金の光の輝く街

 静かなパリの夜、黄金の光の輝く街にネオン化が始まっています。中国人の友人に「中国の田舎町みたいになりますよ」と言われてびっくり。そういえば、あちこちに紫青黄のネオンの棒が見あたります。
 驚くのは花屋さん。以前はウインドウの花々の美しさに足を止めたものですが、今はネオンのために店内はうす暗く、何を売る店かも定かでない。薬局の緑十字も必要以上にどぎつく、ギラギラと回転したり点滅したり、見る人の心臓に悪いと思います。またホテル探しの他国人のためにか高所につけられている「HOTEL」の看板(他の店は2階の高さまで許可)の品位のないネオンサイン。
 スーパー、ファーストフード、ビデオクラブ、カフェ・タバ、クスクス・レストランにギリシア、インド、中国…さすがフランスレストランはないと思ってましたら、あの有名なトゥール・ダルジャンの不格好な大きなダンブクロのような宙ぶらりんのネオン。以前は夜空に美しく輝いていた灯も目立たず、入口は真っ暗、憧れも消え失せてしまいます。
 フランス人の光に対するこだわりをいつもうらやましく思っていたのですが、例えば、車のヘッドライトの黄色は眼に優しかったし、夜のオートルートも美しかった。今、美的感覚をまったく無視したエゴイスティックな広告群、ギラギラとした文字は読みにくく、おだやかなオレンジやクリーム色の方が暗い夜空の中でかえって読みやすかった。ウインドウや入口を赤や青の棒で囲むなんてナンセンス。こんなのがパリ中びっしりとなったらどうしましょう。
 友人は京都の人なのに「あんたこんなん日本から見たら全然や」。慣れるのは恐ろしいことです。私たちの大切なパリ、光の、芸術の街パリを今のうちになんとか守って欲しい。84歳の私としては、このままでは死に切れぬ思いです。(松村美與子)