水辺の町を魚のようにスイスイと。
この日、ー6℃だというのに、元気にロワール川で釣りをするおじさんたち。夕方の川沿いの道に点滅する、中の見えないバーのネオン。17、18世紀フランス随一の貿易港で、酒、鉄砲、ガラス小物、布をアンゴラやギニアなどで奴隷と交換し、その奴隷たちをアンチーユでコーヒーやタバコ、砂糖と交換してナントへ戻るという三角貿易で富をなした商人の館や、船主の名前がついた小径・・・。町には雑多な港町風情が漂います。
散歩の後、Chez l’Huîtreでカキ+地酒〈ミュスカデ〉で夕食を始め、鰯のマリネ、サメ・ウナギ・カジキの薫製、最後に焼いたキュレ・ナンテ(チーズ)をハチミツと。「きれいなキモノを持って来てくれたら、次回はご馳走するわ」と女主人。彼女から教えてもらったエードル川沿いのジャズクラブLe canotierは、気さくなカフェ風。その晩はジャムセッションでスタンダードの演奏。最終トラムもなくなり、宿へ夜道を歩く。同じく深夜散歩の人々とすれ違う。
翌朝はオペラ座正面、1900年スタイルの老舗ブラッスリーLa Cigaleで朝食。店内で新聞を読む、お腹の出た貫禄ある中年男。日曜の朝から三つ揃いでりゅうとした風情は、100年前のナントから出てきたようだ。どこか大工場の取締役だろうか?小高い丘のタランサック市場へ。ミュスカデで洗いながら熟成されたキュレ・ナンテや山羊チーズを買う。大きなビーツ、みずみずしい野菜。カキが10種以上並ぶ店もある。カキ全種類、一個づつ開けてと注文し、その場で冷えたミュスカデとツルッ、キュ・・・なんてできたらな・・・と夢想しつつ徘徊。クレープ屋も大繁盛。直径7センチ程のウナギの薫製、キャビアが並ぶ総菜屋。ここでクールブイヨンでゆがいたロワール川のウナギの稚魚をほんの一握り包んでもらい(10€)、近くのバーで冷えたミュスカデと。カフェにいる食いしん坊風なおじさんが、市場近くのL’Océanideの魚料理を勧めてくれた。日曜昼のゆったりした賑わいのなかでナント発祥のブールブランソースをかけたスズキを味わい、交通費の元がとれたと実感。もはやブルターニュ公城見学はどうでもよくなる。食後、一応城に寄れば、2006年まで改装中とのこと(ホッ)。城の中庭の書店で、ナント関連の本を物色。
デザートもおいしかった。 バタービスケットでお馴染みのLUの古い工場内に、カフェやレストラン、書店などを配したLe Lieu Unique には2年前のオープン時から来たかった。予想していた以上の居心地のよさ。帰りの電車5分前まで、お茶を楽しみました。(美)