緊迫する一方の世界情勢の中、文芸界の最新の話題として2月末に他界したモーリス・ブランショを取り上げるという選択もあった。話題の新刊本としてLe Mondeの幹部と政財界との繋がりを「暴露」して大きな波紋を投げかけるだけでなく、記録的売り上げを更新している『La Face cachee du Monde』*を紹介するという選択もあった。あるいは緊迫する一方の世界情勢をよそに、だからこそ、想像の世界へ、愛へ誘う書を紹介するという選択もあった。しかし、今…
今、読み返すべき、読むべきものは、先頃、ちくま学芸文庫から新たにその邦訳も再版されたギー・ドゥボール。
情報資本主義社会批判であるとか、30年以上も前の社会分析が現在を予告していたとか、そうして分析された当時の世界がさらにこの30年で極端になった、というような現代世界への批判的視野を持つためだけでなく、テレビやニュースなどに代表される「スペクタクル」だけが「世界」でないことを再認識するためにも。そして読書の世界へ…。(樫)
「読書、すなわち、各行に真なる判断を強い、そして唯一、壮大なる人間的反スペクタクルの体験への鍵となりうるもの」**
*Pierre Pean, Philippe Cohen,
『La Face cachee du Monde : Du contre pouvoir aux abus de pouvoir』
Fayard, 2003, 632p., 24€.
**『Commentaires sur la societe du spectacle』Gallimard, coll. “folio”, p. 46. 147p., 3,13€ 『スペクタクルの社会についての注釈』木下誠訳、現代思潮新社(エートル叢書)2000年 2200円
– Guy Debord『La Societe du Spectacle』
Gallimard, coll. “folio”, 208p, 4,50€
ギー・ドゥボール著『スペクタクルの社会』木下誠訳、筑摩書房(ちくま学芸文庫)2003 年 1200円