Gateau aux noix
晩秋になると、運がいいことに、隣家のクルミの木からわが家の庭にクルミがたくさん落ちて、5、6キロは収穫できる。これを風通しのよいところで乾燥させてから、友人のジャン=クロードにおすそ分けしたところ、翌々日、彼はそのクルミを使ったケーキを作って持ってきてくれた。これがうまい! さっそく作り方を聞いてトライしてみました。
殻から出したクルミ(面倒な人は殻なしのクルミを買ってくる)150グラムは、ミキサーにかけて粉状にする。粉状のアーモンドも100グラム用意する。合わせて250グラムだが、割合は好みで、ジャン=クロードいわく、同量にしてもおいしくできるとのこと。
バター125グラムを小さく切り分けて、室温に置いておく。直径20センチの型にバターを塗る。オーブンの目盛りを200度(6か7)に合わせて点火する。
柔らかくなったバターをボールにとり、スプーンでかき混ぜながらポマード状にする。ここへ砂糖250グラムから300グラムを少しずつ混ぜ入れていくのだが、なかなか力のいる作業だ。
次は卵の黄身5個分を、一個ずつ混ぜ入れ、クルミとアーモンドを加える。さらにラム酒大さじ2杯、ふるいにかけた小麦粉80グラムを加え、全体が均等になるまで混ぜ合わせる。これを型に流し込み、熱くなっているオーブンに入れ、35分から40分焼く。すっかり冷めてから型から抜きます。
ジャン=クロードのケーキは、全体が薄くチョコレートで覆われていたけれど、ボクは、そのままの方が、クルミのおいしさがいきると思う。あとは形のいいクルミで表面を飾るだけ。クレーム・アングレーズを作って(下欄参照)添えれば文句なし、歓声が上がるだろう。
デザートというよりも、午後のおやつに向いたケーキです。(真)
●台所の本|P・Cornwell/M・Brown 《Crimes et délices》
パトリシア・コーンウェル作のケイ・スカーペッタ検屍局長シリーズを読む楽しみの一つは、ケイが、ふとっちょのマリーノ刑事や姪のルーシーのために作る料理シーンだ。「何もかもうまくいかないとき、私は料理する」(『検屍官』相原真理子訳)というケイのレシピや、マリーノと通うレストランの一品、そして主人公同様に料理好きな著者の得意料理が集められた一冊。ルーシーといっしょに作る場面が忘れられないあのピッツァ、カニのコロッケ、セープ茸入りのラザーニャ、赤ワインでマリネした牛のステーキ、ジャック・ダニエル風味のクルミパイ…。メスをふるってください。(真)
●クルミ noix
八百屋の店頭にまだクルミが並んでいる。ペリゴール地方とドーフィネ地方が主な産地で、値段はキロ4ロ前後。ザルにでも入れて、クルミ割りといっしょに置いておくと、秋から冬にかけての食卓が楽しくなる。ビールやウイスキーのおつまみに最適だし、アンディーブのサラダに入れれば味のアクセントになる。コンテやルブロションなどのチーズを食べながらかじるのもうまい。乾燥しすぎで少々しなびてきたら、ミルクにしばらく漬けると元に戻ります。脂質やタンパク質に富んでいて、ベジタリアンには欠かせない食品になっている。
ケーキの飾りに使うクルミは、あらかじめ薄いカラメルを通しておくとツヤが出てきれい。小鍋に、砂糖大さじ2杯、水大さじ2杯、ビネガー少々をとり、火にかける。少々煮詰まってきたな、というときにクルミを加えて混ぜ合わせ、一個ずつとりだしては、油を薄く塗った皿に並べて冷ませば準備完了。
●クレーム・アングレーズ
今回のクルミのケーキやチョコレートケーキに合う本格的なcrême anglaise(カスタードソース)を作ってみよう。バニラ1本を縦割りにし、中の種を丁寧にかき出す。鍋に牛乳半リットルをとり、バニラの種とさやを入れ、香りが出るように沸騰させてから冷ます。バニラのさやをとり出す。卵5個分の黄身をボールにとり、砂糖200グラムを加えてから、泡立て器を使って、白っぽくなるまで混ぜ合わせる。生ぬるくなった牛乳を加えて混ぜ合わせ、弱火にかける。木のへらを使って絶えずかき混ぜながら70度を目指す。沸騰させると卵と牛乳が分離してしまうので、表面がきめ細かい泡で覆われるようになったら要注意。クリームがへらを覆うようになり、指で書いた「一」文字が消えないようになったらでき上がりだ。煮え続けないように、冷水にさっとつけて余熱をとります。温かいケーキには温かいまま、冷たいケーキには冷ましたものを添えます。