●Japon メキシコの乾いた大自然。無口な中年男が死に場所を求め彷徨うが、宿貸しの老女を前に、眠っていた生と性の衝動が呼び覚まされる。 弁護士業から一転、映画を志したという31歳のカルロ・レイガダス監督は、長編第一作にしてはどこまでも大胆不敵な作品を撮り上げた。老成したテーマに加え、実際の村人たちの言葉もカットせずに残すことで、さらっとドラマのレールを踏み外してみせたり。すでにキアロスタミを知る私たちに新たな演出上の驚きはなくとも、クレッシェンドに引き上げられたドラマの緊張感を、迷いもなくガス抜きしてしまう大胆さに驚かされる。物語に関係ないのに、なぜかタイトルを『Japon(日本)』と命名してしまう態度までもが挑発的で大胆だ。昨年度カンヌ映画祭カメラドール受賞作品。(瑞) |
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●Le ventre de Juliette 恋人の子供をみごもった若いジュリエットは、誰の助けもなしに子供を生み育てようと奮闘する…のだが、まわりの環境がよろしくない。いつも夢見る子ちゃんで経済観念のない母親と、裕福な家庭の主婦として世話をやきたがる姉、失踪してしまう子供の父親…強がりを言ってもジュリエットには頼れる相手が必要だ。 J・パルモンチエ、C・マウラ、N・リシャール、P・シェネ、T・ノーヴァンブル、S・リドーと、個性的な魅力の役者が勢揃いしているのだが、演出の力不足からか演技が不自然だったり、心理描写が表面的だったり、ストーリーに無駄があったり…となんだかすっきりしない印象を受けた。監督は、マルタン・プロヴォ。(海) |
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●La Trilogie : Un couple epatant / Cavale / Apres la vie 1996年に長編作品『男と女と男』で注目された監督ルカ・ベルヴォーが、三部作と銘打って、同時に発表した三本の新作。「主役と脇役の違いは、物語の中心にいるかどうか、ということ。作品が違えば主役と脇役が入れ替わってもいいのだ」という、当然といえば当然な論理が出発点にある。中心となる男女6人(O・ムーティとF・モレルが『男と女と男』のような知的でハイソな中年夫婦を、ベルヴォーとC・フロが昔学生運動で理想を一緒に追った男女を、D・ブランとG・メルキがモルヒネ中毒者と警官という一風変わった夫婦を演じる)が、同時期にそれぞれの話を展開する…といっても、友人または顔見知りである彼らには共通の体験があるから、三つの話は交差しからみあい、複雑な模様を織り上げていく。3本見た後に全体像が浮かび、ベルヴォーの仕事の意味が理解できた。なんと実験的で冒険的な試みだろう!(海) |
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