Potée
「真さん、寒くなりましたね、またポテの作り方を教えてください」と友人から注文がきた。ポテは、肉の塊と大ぶりに切った野菜をいっしょに煮込んだ料理で、フランス各地方に、それぞれ自慢の肉やソーセージ、野菜を入れたポテがある。ボクらも、思いのまま、気楽にポテを作りましょう。
6人前として、豚の塩蔵肉(下の欄参照)のすね肉とか肩肉とか、好みのところを1キロ半、それに燻製風味のソーセージを1、2本買ってくる。野菜は緑のキャベツ、カブ、ニンジン、ジャガイモ、セロリなどを用意したい。
塩蔵肉は、以前なら水を変えながら半日以上塩出ししたものだが、最近は薄塩なので、2、3時間の塩出しで充分。時間がない時は、いくつかに切り分けてから、8分ほどゆでて取り出すだけでもいい。
できるだけ大きく深い鍋に、肉の塊、二つに切り分けたニンジン6本、二つに割ったカブ4個、大きく切り分けたセロリの茎3本を入れ、たっぷりに水を張って火にかける。押しつぶしたニンニク3片、丁字を2、3本刺したタマネギ、ブーケ・ガルニも加える。コショウも多めに挽き入れるが、塩は、肉から塩気が出るのでいりません。沸騰したら、火を落とし、コトコトと煮込んでいきましょう。
この間に、キャベツ半玉を二つに割ってから5、6分湯がいて水気を切っておく。ソーセージ(なかったらベーコンでも構わない)を人数分に切り分けておく。
肉を煮始めて1時間経ったら、キャベツとソーセージを加え、もう30分。ここで皮をむいておいた中くらいのジャガイモ6個を丸ごと加える。ジャガイモが柔らかくなればできあがりという簡単さだ。
まずは、素晴らしい風味になったスープを、好みでおろしチーズやクルトンを浮かべて味わいたい。そしてポテの本体が登場。深目の大皿の中央に柔らかく煮上げられた豚肉やソーセージ、その周りには、とろけそうな野菜たち、そしてそこから湯気が立ちのぼる。フランスの友人たちも大感激。(真)
●台所の本|La Cuisine des Légumes
風邪など引かないように、野菜をたくさん食べよう、と決心をしたら、この一冊。
ピーマン、ナス、トマト、クルジェット、ネギ、キャベツ、茎野菜、根菜、サラダ、豆類など、フランスの八百屋で見かけるほとんどの野菜が、種類別に紹介されている。色、形、匂い、味の特徴、栽培方法、選び方、調理法などがわかりやすく書かれているだけでなく、写真も鮮明で、実物を見ながらという感じで、ひとつひとつ名前を覚えていくことができる。それぞれの野菜につき、いくつかのレシピも紹介されているが、エスニック風料理もあるのが楽しい。(真)
●豚の塩蔵肉 petit salé
昔は、晩秋から春先にかけて豚をと殺し、ハムやソーセージ、ソーシソンなどに加工したり、塩漬けで保存したりして、一年中味わったものだという。生の肉より早く煮え上がることや、赤身を帯びた肉の風味が独特なので、今でもプチ・サレは、フランス人の好物だ。ポテにしたりレンズ豆と煮込んだりしたい。値段もキロ10ユーロ前後と手ごろ。皮つきで脂がのり、こってりとしたスープがとれるjambonneau(すね肉)、適度の脂でレンズ豆との煮込みなどに向いている残hine(背肉)やtravers(脇腹肉)、あっさり味のpalette(肩肉)、安くてキャベツと煮込んだりするとうまいpoitrine(三枚肉)…料理や好みによって買い分けましょう。
●ポテが残ったら
ポテが残ってしまうのは、本当にうれしいことだ。残るくらいに作るのが正解だ。カレーやクリーム煮などにして味を変えてもいい。肉がたくさん残ったら、こまかくほぐしてからアシ・パルマンティエ。スープもたっぷり残ったら、しょう油やショウガの風味を加えてラーメンのツユにするのが最高だ。
●台所のフランス語|blanchirblanchir
blanchirblanchirは、野菜や肉、その他の食材をさっと湯がくこと。その目的は、固い野菜の下煮だったり、扱いにくい材料をしまらせることだったり、匂いやアク、ベーコンなどの余分な塩分をとったりすること。ショックを与えないように、食材を入れて水から火にかけるのがふつうだが、赤や緑のきれいな野菜の色を定着させたい時には、沸騰してから加え、火が通ったらすぐに冷水にとります。塩分をとるとき以外は、塩ゆで。ケーキやカスタードクリームを作る時に、卵の黄身に砂糖を加え泡立て器で全体が白っぽくなるまで混ぜ合わせることもblanchirという。