アカデミー外国映画賞等を獲得した『ノー・マンズ・ランド』(ダニス・タノヴィッチ監督/01)は、戦争のナンセンスさを見事な寓話に仕上げた秀作だった。『コーカサスの虜/Le Prisonnier du Caucase』(セルゲイ・ボドロフ監督/96)も然り。96年のカンヌ・監督週間で話題になり、日本ではとうに公開済みの作品。その時の日本のプレスに掲載されたインタビューの中で監督は「…戦争の問題、人間の問題、そうした問題を普遍的に捉えているこの映画の中では、チェチェン人とかチェチェンといった言葉は出てきません。実は、私はこの映画を作った時に、映画が完成する頃にはチェチェン紛争は終わっているだろうと思っていたんです。だから戦争が終わった後に上映されても普遍的に通じるようにチェチェンという言葉は入れてないんです」と語っている。皮肉なことに映画完成後6年たった今もこの地域の紛争に終止のメドは立っていない。 カスピ海西側の山岳地帯、コーカサス地方。徴兵されたばかりのロシア軍兵士ワーニャ(S・ボドロフ JR:監督の息子で『イースト/ウェスト』では水泳選手を演じていた)とベテラン兵、サーシャ(オレグ・メンシコフ:『太陽に灼かれて』『シベリアの理髪師』等で一番人気)は、地元独立派との小競り合いで生き残り捕虜となる。地主のアブドゥルは、二人の捕虜を、ロシア軍の捕虜になっている自分の息子との交換材料に使おうと画策する。ロシア側に捕虜の実在をアピールするために、ワーニャに手紙を書かせ、彼の母を呼び寄せるが…。子供を捕虜にされた親同士の対面、捕虜の世話係となった地元の少女ディナとワーニャの心の交流、そうした一人間レベルの感情が大きな不条理に呑み込まれていく…。(吉) |
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●夏の映画キャンペーン 7/15日~8/24日、パリのArt & Essai系映画館では26歳未満の料金を3ロに割り引き。8/25-26-27日は市内全映画館(86館)が年令や時間帯に関係なく一律3 €。●ラ・ヴィレットで野外映画上映会 7/16日~8/25日(月除)、22hから公園の大画面で名画上映(無料)。邦画は溝口健二「雨月物語」(7/19)、黒澤明「蜘蛛巣城」(7/24)、黒沢清「回路」(8/7)など。 プログラムはwww.la-villette.comで。デッキチェアと毛布は6€で借りられます。 16日は、キューブリックの傑作『2001年宇宙の旅』。21日は、ジャック・リヴェットの『セリーヌとジュリーは舟で行く』、23日は、ホラー映画の古典となったジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』、26日は、昨年のカンヌ映画祭で高く評価されたサミラ・マクマルバフの『黒板』、8月に入ると、2日は、キアロスタミの傑作『そして、人生は続く』、4日は、少年と移民の交流を厳しく描いたダルデンヌ兄弟の『約束』、6日はルノワールの『大いなる幻影』、8日は、ケーリー・グラントが最高におかしいホークスの『モンキー・ビジネス』… 7/23~28日(19h-)、ラ・ヴィレットのGrande HalleのSalle Boris Vianで(無料)。25日:ナイル監督(インド)「死座」、26日:ジャリリ監督(イラン)「ダンス・オブ・ダスト」、28日:クレイフィ監督(パレスチナ)「ガリレアの結婚」他。 ● Cinema au clair de lune 8/6日~25日(月除)、毎晩21h30から市内の広場や公園でパリが舞台になった名画を野外上映(無料)。例えば8/6日はモンマルトルのSquare Willetteで「アメリ」を上映。上映場所と題名は、www.forumdes images.netのFestivalで調べられます。 |