●Laure Adler《 A ce soir》 1989年、ミッテランの文化顧問。1993年からはFrance 2で深夜に放映されていた文化番組「Le Cercle de minuit」の制作と司会。現在は文化専門ラジオ局France-Cultureの代表。こうした社会的、文化的地位をもつLaure Adler。そして、1998年のマルグリット・デュラスの伝記を含め、女性史や女性問題についての書をすでに数冊書いている彼女。その彼女の最も私的、女性的、母性的なこのテクストを語ることは難しい。 生後2年足らずで亡くした子供の回想を基盤に書かれたこのテクストはあまりにも私的であり、何人もその悲しみと苦痛について語ることはできない、特にそれが公的地位が確立している者によって書かれているだけに。さらに、女性問題がその主要な関心の一つである彼女の、最も女性的で母性的な感受性と感情がこのテクストに満ちていることも、このテクストについて語ることを難しくする。そして「小説」や「エッセー」というジャンルも提示されていないことによる曖昧さもある。しかし… しかし、断片化されたこのテクストは、何らかの真実や現実の露呈でも教示でもなく、一読者として向かい合ったとき、読者は、自身の中で言葉にされていない問いがこのテクストの言葉と語りによって具象化するのを感じるだろう。クンデラがいうように、文学とは「存在」を示すこと、存在への問いであるなら、このテクストはまさに文学だ。答えをそこに求めてはいけない。答えは文学のこちら側、存在が生きられるのは現実の中、なのだ。 問いを見いだしたい人たちへ。答えを「生きたい」人たちへ。鍵言葉:母性、生と文学、沈黙と言葉、世界と私。(樫) |
![]()
*Gallimard, 2001, 192 p., 14,95euros(98,70 f) |
