日本でも大ヒットとなったJ=P・ジュネの『アメリ』、先日、12人程の集まりで観てないのは唯一人だった。そこで何故こんなにウケるのだろう? という話になり「シンプルで癒されるから」というのがそこでの結論となった。フランス映画は基本的に “辛気くさい” というのが一般日本人が抱いているイメージ。ウジウジと悩む様子を映画で見せられてもねー。フィリップ・ガレルなどはその代表格だが、最新作の『Sauvage innocence』は、ラウル・クタールのモノクロ画面とか余韻を残すカット割とか、出演者のタイプ等々が、妙に懐かしいヌーヴェル・ヴァーグのタッチで、そこが心地よかった。ストーリーの方は、主人公の映画監督が、ヘロインの害をテーマにした新作のプロデューサーを探し、一方で道で出会った女優の卵に恋をして彼女を主演に抜擢し、そうこうするうちに実はこの映画が成立するための鍵はヘロインだったという皮肉で哀しい話。
しかし、クリスマス、お正月休みには、ユーセフ・シャヒーン監督『Silence…on tourne/撮影中、お静かに!』みたいなカリカチュアライズされた単純明快な話にプラスして、歌あり踊りありのお気楽映画が、お祭り気分にハマってよろしいのではないか? シャヒーンといえば、フランス映画界が長年ヨイショしてきたエジプトの巨匠。社会性のある作品、歴史大作を撮る監督だが、ブッ飛んだところがある。今回は、そのブッ飛びのエッセンスだ。が、考えてみれば映画が大衆芸能として生きているインドやエジプトの普通の映画の轍を踏んでいるだけなのだ。ヒロインを演じるラティファ(Latifa)は、アラブミュージックのスーパースターらしい。全部が濃い系だけど、たまにはイイでしょ。(吉)
“Silence…on tourne”
