●Man on the moon 可笑しくて笑い過ぎて涙が出た。でも気づいたら、”笑い”ではなく”感動”の涙に変わっていた……そんな映画です。
70年代半ばから35歳で亡くなる84年まで、アメリカのショービジネス界を一気に駆け抜けた喜劇スター、アンディ・カウフマン。二つの名前を使い分け、放送コードもお構いなしに “笑い” を追求。女性相手にプロレスをしかけるなど、常に周りの感情を煽り、意表を突き続けた男である。前作『ラリーフリント』同様、”老いてますます盛ん”な巨匠ミロス・フォアマンが、実在した反コンフォルミストの人間(監督自身?)に再びスポットを当てているのが興味深い。でもつべこべ言わずとも、劇場で思い切り笑いたい人、ジム・キャリーのこぼれ落ちそうな目玉に驚きたい人には絶対おススメ。〔注意〕映画の最初の10分間とんでもない仕掛けがしてあるので、見逃さないよう、劇場には早めに着くように!(瑞)
●Scene des crimes
白昼に自宅から誘拐された少女の行方を追う二人の刑事は、数年前に迷宮入りとなった若い女性の失踪&殺人事件とこの事件が、いくつかの点で類似していることに気づく。
派手なカーアクションも暴力もないし、特殊映像や音響効果も使われていないけれど、メルヴィル以来の本格派「刑事ドラマ」で、地味ながら見ごたえがある。もうすぐ父親になる若い模範刑事(シャルル・ベルリン)と、妻との離縁と娘の自立を同時に迎え孤独のあまり酒に溺れるベテラン刑事(アンドレ・デュソリエ)。この二人の刑事コンビの性格付けもよくできている。最後の展開が急すぎることや犯人の心理など、理解できない部分も残るのだが、監督フレデリック・ションドーファーはこの処女長編作をよくまとめあげている。(海)
●Nadia et les hippopotames
1995年末にパリを麻痺させた長期ストを覚えている人は多いだろう。3年前に”L’autre cote de la mer” で注目を浴びた女流監督ドミニック・カブレラは、乳飲み子を抱え生活に困るナディアという女(最近少し見飽きてきた感のあるアリアンヌ・アスカリド)を主人公に、このストの期間のある一晩に起こる出来事を物語にした。組合員と非組合員の男女が互いに慰め合う車中でのシーンや本物の組合員との会合シーンなど、個々に見るといい部分は数あるのだが、ストという政治的な要素と、その中に偶然飛び込んだナディアという異分子が起こすヒステリーの数々のかみ合わせが悪くて、中途半端な後味の悪さが残るのが残念。(海)