最新映画情報 N° 446 1999-11-01 ● L’Humanite 刑事ファラオンは、娘と妻を同時に亡くすという暗い過去を持っている。 人付き合いが悪く内にこもりがちのファラオンが唯一心を許すのが、近所に住む独身女性ドミノとその恋人ジョゼフで、三人はよく連れ立って外出している。 ファラオンは、地元で起こった幼女暴行殺人事件を調べているが、手がかりが少なくて捜査は難航するばかり…。 この作品は、今年のカンヌ映画祭で3つの賞を獲得し、なぜ素人の役者がプロを押しのけて賞を得るのか? などと物議を醸し出した。 でも、そんなことより、ヒューマニティーってなんだろう、と監督ブルーノ・デュモンは問いかける。 悪はだれの心にも潜んでいるもの、他人の犯した過ちは受け入れなくてはならない。人間は哀れで悲しい生き物…。 エマニュエル・ショテの不器用な演技がファラオンという「人」に重なっていくのを見ながら、素人とたたかれようが適役とはこういうことなんだな、と思う。(海) ● L’Arbre aux cerises 時間から置き忘れられたような谷間の小さな村に生きる人々と、彼らの間に起こるできごとを綴った作品。 ガンの初期症状に気づき村医者を引退する男、男に惚れたばかりに下宿屋を構える女、新しく村にやってくる新任の若い医者、不在の母親に代わり年老いて弱った祖母と幼い弟を世話する若い娘…村を囲む岩壁や大きなさくらんぼの木に見守られながら、雨の中、風の中を行く彼らの姿は、言葉少なく断片的に、けれども詩的でベールにくるまれたような優しい余韻を残しながら綴られていく。 時が経てば人も変わり、祖母とさくらんぼの木を同時に失った少年も別世界へと旅立っていく。 スペイン、カタロニア出身の監督マルク・ロシャは、この2作目の長編で27歳とは思えない成熟さを見せる。(海) ● Rencontres internationals de cinema a Paris ヴェネツィア映画祭に「大いなる幻影」が上映されるなど、黒沢清の国際的評価が高まっている中で、パリの “Rencontre international de cinema” で彼の作品6本をまとめて観ることができるのは、うれしい。「ドレミファ娘の血は騒ぐ」(3日/ 22h、 7日/21h)、「勝手にしやがれ!! 英雄計画」(5日/22h30、 7日/15h)、「CURE キュア」(7日/19h)、「蛇の道」(4日/14h、 6日/17h)、「ニンゲン合格」(3日/21h30)、「大いなる幻影」(4日/19h30、 5 日/16h15)。 アモス・コレックが監督し、アンナ・トンプソンが主演する2作も必見。「Sue perdue dans Manhattan」(4日/21h30) は97年のベストワン作品だ、と僕は思っている。静脈が透けて見えそうな白い肌、何かをいいたげな厚い唇を持ったスーの、孤独からの救いを求める仕草や言葉に、男たちはちっとも気づかない。近々公開される「Fiona 」(3日/20h、4日/15h) への期待も大きい。(真) *Forum des images : Porte Saint-Eustache Forum des Halles 1er 01.4476.6333 Share on : Recommandé:おすすめ記事 【第18回キノタヨ現代日本映画祭】映画を介した日仏の文化的対話へ。名優・役所広司の特集上映も。 【シネマ】ショーン・ベイカー『Anora』公開。『プリティ・ウーマン』への30年後の返答。 【Cinéma】根源的な映画の喜び、オディアールの新たな代表作『Emilia Perez』。 【シネマ】70年代日本のウーマンリブを語る『30年のシスターフッド』。上映とトークの会(無料) 話題の政治劇 『クレムリンの魔術師』ベストセラーが舞台に! 【シネマ】円熟の秋のミステリードラマ 『 Quand vient l’automne 』