暑い。こういう時、混んでいるメトロやバスには乗りたくないものだ。でも乗らねばならない。蒸す車内で、暑苦しい人の傍になったりすると暑さが増すようだ。でも、そんなことを言っている本人が最も「暑苦しそう」だったりする。どうしたら涼しげに見えるか。街へ《涼しげな人》ウォッチングに出かけることにした。 チュイルリー公園の木陰。毛糸のセーターを編んでいるのに、涼しげな60代の女性。純白の地に青の細かい花模様のTシャツ、青のフレアースカート。「服はいつもC&Aで買ってます。安いんですよ」。Tシャツが新品に見えたのはしっかりアイロンをかけているからだった。清潔感もキーポイント。 風にロングヘアとスカートをなびかせて歩いていた美女。爽やかな金色の風のようだった。《涼の演出》法は?「ストレッチ素材、黒、ピッタリしたものは避けてます。丈の長いものが好きかしら…。長くて軽い素材だと風になびくからかもしれませんね。パステルカラーとか、涼しそうな色を身につけるとか。夏だから赤なども着たいけれど、肌を焼いてからでないとダメ。顔だちがきついこともあって、あまりはっきりした色も着られない。手は大きいからアクセントをおかないように、夏も冬もフレンチ・マニキュアだけ。香水は夏は軽いもの、シトラス系など。今日は “CERRUTI 1880″。メイクは夏はナチュラルが基本ですが、夜外出する時は緑や青のマスカラ、淡いパール系のアイシャドーなどをつけます」。人魚姫のような彼女でさえ、自分をしっかり研究しているのだ。(1) グラン・ブブと呼ばれ、マリやセネガル、モリタニアなどで着用されている服装の男性。わきが大きく開いていて風が服のなかを通り抜ける。大きな袖を肩の上にまくし上げる姿も凛々しい。男性三人組、パーティーのおめかしかと思ったら「ただ暑いから」との答。(2) 健康的ヘソ出しルックのお嬢さん。「〈涼〉と〈魅惑〉両方兼ねてます」。彼女みたいなスタイルなら真似してみたいものだが…。夏の香水はハーバル系。(3) カフェで夕涼みの男性。さっぱりした頭とサンダル、前を開けたシャツ。カジュアルなのにダラリとしない。シャツは暖色だけど爽涼感。「まず自分が涼しくあること。人の真似はしたくないけれど『こういう風には見えたくない』と、他人を見て自然と学んでいると思います。シャツとズボンはアイロンを軽く。かけ過ぎや糊のきいたシャツは苦手。素材の選択、色の組み合わせには気を使います。シャツは今日はオレンジの気分だったけれど、乾いてなかったからコレになりました。香水?ほとんどつけません」。装飾美術の仕事をしているという彼は、話し方が美しい。穏やかで涼しげな表情も大切な要素だ。(4) 今年は《暑苦しい》と言われないよう、盛夏にむけて研究を続けることにした。(美) |
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