最後の砦、フランス語を守る ?

 1992年に欧州理事会が承認した「地域・少数民族言語憲章」にこの5月29日18カ国が署名、8カ国がすでに批准している。フランスは批准どころか、この憲章をめぐって賛否両派に分かれて喧々ごうごう、論戦の火花を散らしている。
 そこでシラク大統領が憲法評議会にお伺いをたてたところ、1992年、仏憲法第 1条の改正により「フランスは不可分」であり「フランスの言語は唯一フランス語」という条文が挿入されたので、条文を改正しないかぎり地域・少数民族言語憲章の批准は不可能、という回答が出た(6/15)。
 憲法を改正するには大統領の承認が必要なのだが、シラク大統領はことの重大さを察し、憲法改正に”ノン”と表明したから、同憲章の批准は前途多難に。英・伊・スペインもまだ批准していないところをみると、各国とも慎重に構えているようだ。
 憲章はまず「少数民族の認知を目指すのではなく欧州の文化財産である言語を奨励すること」と明示している。フランスは94項目のうち39項目を受け入れ、教育 (希望者は地域語を習得できる)、司法・行政(重要な法律は地域語に訳し、公官庁で地域語での応対を保証する)、マスメディア、出版・文化活動、経済・社会生活で地域語を保護、奨励するというもの。
 しかし、オランダやベルギー、スイスなど歴史的に2種以上の言語が公用語として使われている国とは異なり、フランスでは “フランス語=統一国家フランス”という概念に固執する層が多い。彼らは「地域語を公認したら、革命で得た国家の統一が崩れる」と叫び、現代版”ジャコバン派”(革命時代の民主集中主義派)を任じる。なかでも主権擁護派のシュヴェヌマン内相は、言語による細分化を「フランスのバルカン化」とまで言い切る。
 一方、地方主義派は、単一言語は「言語的ファシズム」と批判し、「地域語は文学・美術・建造物と同様に文化遺産であり、”自由・平等・友愛”、”個人の権利”のもとに地域語を認知すべき」と反論する。
 言語学者によれば、フランスにはなんと75の地域語が存在する。オック、アルザス、ブルターニュ、コルシカ、カタロニア、バスクと、各地で歴史の遺産ともいえる独特の言語が引き継がれている。また移民ととも入ってきたアラビア語やベルベル語、海外県からのクレオル語などもパリ地域に定着している。言語は人とともに移動し、必要の度合によって盛衰する。また、フランスでは第3共和政期(1870-1940)に地域語が排されたように、国家主義によって封じこめられることもある。
 今日、英語が支配するインターネットでつながる国際社会の中で、フランス語がかき消されることへの危機感と、フランス語圏弱体化への焦り。もしかしたらこの辺に、ジャコバン派が地域語を警戒し、フランス語にしがみつく所以があるのかもしれない。(君)



フランスで地域語を話す人口
200万人 オック語 (1400万人)
100万人 クレオル語(海外県・海外領土)
90万人 アルザス語 (170万人)
25万人 ブルターニュ語 (150万人)
13万人 コルシカ語 (25万人)
12万人 カタロニア語 (37万人)
4万人 バスク語 (26万人)
*( ) 内は地域の人口 (Libération : 99/7/5)

 

パスワードをお忘れの場合、OVNINAVI.COMに登録したE-mailアドレスにパスワードをお送りします。登録E-mailアドレスを入力してください。


戻る