Agneau au paprika et au vinaigre
435号で紹介したスペイン料理の本に出ていたレシピのひとつ。ポルトガルに接するエストレマドゥーラ地方の料理で、パプリカの香りを生かして子羊を煮込む。最近友人が来るたびに、3回ほど作って実験台になってもらったが、「このグラッシュはうまい!」と大好評。とはいうものの、グラッシュはハンガリー料理で、パプリカ風味の “牛肉” の煮込み。「これ子羊の肉なの? 柔らかくてうまいなあ」
子羊は肩肉épauleを一つ買い、肩甲骨paletteをとってもらいましょう。これを食べやすい大きさに角切りにして、塩、コショウ。ココットのような厚鍋にオリーブ油をとって強火にかけ、油が熱くなったら肉を加えて炒めるのだが、一度に入れると温度が下がって焼き色がつかないので、2度か3度に分けて炒めたい。全体にきれいな焼き色がついたら、唐辛子の粉poivre de Cayenneをふたつまみ加え、パプリカ大サジ2杯をまぶしつける。そこへ、つぶしたニンニク6片、丁字6個 (あらかじめハンマーなどを使って粉々にしておく)、刻みパセリ大サジ6杯を混ぜ入れ、水500ccを加える。沸騰したら弱火にし、フタをして1時間ほど煮込みます。
その間に、バゲットを輪切りにしたものを8個用意し、ワインビネガー大サジ5杯ほどを吸い込ませて、オリーブ油でこんがりと炒めて小さく切っておく。
肉がすっかり柔らかくなったころだろう。煮汁が多いようだったら、フタをとって少々煮詰め、ビネガー風味のパンを加えてコクを出します。最後に塩とコショウで味を調えれば完成。ご飯やゆでジャガを添えます。
パプリカの独特な風味とほかのスパイスが一つになり、子羊の味を引き立てている。ワインは、香り負けしないように、カオールやマディランのようなコクのある赤にしたい。(実)
材料 : 子羊の肩肉一つ、バゲットパン少々、パプリカ大サジ2杯、ニンニク6片、丁字6個、刻みパセリ大サジ6杯、poivre de Cayenne少々、オリーブ油、塩、コショウ。
●ハーブ・スパイス探検|paprika
辛みの少ない、赤や黄色のハンガリー産唐辛子を乾燥させて粉にしたものがパプリカ。スペインではpimenton といい、辛さによって数種のパプリカがあるが、フランスで売られているのは、ほとんどがpaprika douxで、柔らかい香りと甘みが特長だ。グラッシュやカレーといった煮込み料理、スープ、キャベツの詰め物などに使われる。フレッシュ・チーズやグーダチーズにまぶすのもうまい。揚げ物の衣に入れるのも面白い。使うときは、香りだけでなく美しい朱色を生かしたいものだ。今度の料理のようにたくさん使う機会が多いなら、小瓶入りは割高。朝市などで量り売りのものを100グラムほど(10F以内) 買って、瓶に入れて密封して保存しておくのがいい。
●台所の本|Saveurs & terroirs de Provence
Hachette社の “Saveurs & terroirs 味と郷土” シリーズの一冊。料理はまずその材料をよく知ることから始まる、というわけで、パスティス、オリーブ、トリュフ、ニンニク、地中海の魚、ワインなど、プロヴァンス地方の名産が美しい写真入りで、わかりやすく紹介されている。1リットルのオリーブ油を得るためには、5キロのオリーブが必要、などという知識も身についてしまう。
レシピの方は、プロヴァンス地方の10人の名シェフが、それぞれ得意の10品を披露しているが、手の込んだ料理が多く、料理上手でないとちょっとむずかしそうだ。でも出来上がりの写真を見ているだけでも楽しいし、いろんなヒントは盗める。このシリーズでは、すでに “Alsace”、”Bretagne”、”Midi” などが出ている。