最新映画情報 N° 436 1999-05-01 ●Petits Freres 手持ちカメラでも追いきれず、すぐに画面からはみ出してしまう5人の少年少女の生命力のおかげで、僕らが大好きだったジャック・ドワイヨンが戻ってきた。 義父に耐えきれず、愛犬のキム (ピットブル) といっしょに家出をした13歳のタリア。彼女は友人を訪ねてパリ郊外、パンタンの団地にやってくる。そこで出会うのが、団地の兄貴分たちを見習ってバイクや自転車をかっぱらったりするのも平気な四人組少年団で、彼らは小遣いほしさにキムを盗む。愛犬を見つけるまで団地に残る、と宣言するタリア…。 厚かましい言葉づかいや大胆不敵な行動の中に隠されている子供らしさ、そしてトラブルが起こった時の素晴らしい連帯感…を発見して心をドキドキさせているドワイヨンの感動が、カメラの揺れの中に表現されている。(真) ●ROMANCE モデルを職業とするポールはセックスにはとても淡白で、「愛しているよ」と甘い言葉をささやくだけで満足するらしくマリーの体には触れようとしない。 マリーの満たされない肉欲は行き場を失い、町角で出会う男たちに身を委ねながら、ポールと枕をならべるという奇妙な二重生活が築かれていくが…。 ポルノ映画界の帝王といわれるR・シフレディの起用が話題を呼び、ノーカットの性描写が成人映画指定か否かと騒がれた。 でもそんなことより驚きに値するのは、マリーという(キリストの母親と同じ名前で処女であるべき)女の内面までえぐられた「生」の姿であり、難しいマリーの役を演じきった女優カロリーヌ・デュセーであり、マリーの変化を一瞬でも逃がすまいとする監督ブレイアの執念である。 (海) ● EXISTENZ EXISTENZとは体験ゲームの名前。プレイする人間は骨髄に開けた穴から自分の体の内部にケーブルを差し込み、ゲームの中のストーリーづくりに参加するが、ゲームの世界と現実の世界との区別がだんだんつかなくなり…。『裸のランチ』のように、目をそむけたくなるほどグロテスクでリアルな特殊効果がたっぷり使われているし、ゲームが生みだす罪を告発する意外な最後の展開には監督の遊び心もうかがえて、嬉しくなってしまった。ゲームについての映画ではなく映画をゲームにしてしまったのは、やはり未来を読む巨匠クローネンバーグ。(海) Share on : Recommandé:おすすめ記事 【第18回キノタヨ現代日本映画祭】映画を介した日仏の文化的対話へ。名優・役所広司の特集上映も。 【シネマ】ショーン・ベイカー『Anora』公開。『プリティ・ウーマン』への30年後の返答。 【Cinéma】根源的な映画の喜び、オディアールの新たな代表作『Emilia Perez』。 【シネマ】70年代日本のウーマンリブを語る『30年のシスターフッド』。上映とトークの会(無料) 話題の政治劇 『クレムリンの魔術師』ベストセラーが舞台に! 【シネマ】円熟の秋のミステリードラマ 『 Quand vient l’automne 』