青果
卸商のおじさんいわく「レアールにあった中央市場でも仕事してたけど、こっちがずっといいね。レアールは狭くて品物の置き場に困った。机も置けず、地べたで仕事してたって感じだよ。趣きはあったけどさ。仕事場としては断然こっちだね」。中国野菜、エジプト産グアバ、ヴェネズエラ産ライム、チリ産の肥えて甘いさくらんぼ、なぜか缶ビールまで、商品の陳列は04:30ごろから、売買は07:00から。新鮮なハーブ専門店もじっくり見たい。青果部門は大きいホールが10棟。広いのはいいが、買い手は商品を見て回るのが大
変だ。だからヨソでは見られない自転車が重宝がられる。
ナツメヤシはラマダン期間中、回教徒の大切な栄養源。ベルビルで青果店を営むマルコさん、ラマダン前に7トンのナツメヤシを仕入れた。「沢山買ったし、勉強してもらったよ」と、満足そうだった。 猪や鹿、鴨にキジ、去勢鶏や毛並みのいい兎たちはここ”Gibier Volaille”館(地図●)で。内臓を取られても毛はそのままだったりでホール内部は華やかだ。でも気温は低くて冷蔵庫。中央にあるカフェ”サンテュ
ベール”は大きくないが、客の多さ、回転の異常な速さには驚いた!
白衣の男たちが(女性は1%ほど)カウンターに群がっている。白衣が血で真っ赤な牛の解体歴30年の職人さんや、すぐ隣に店を持つ卸商の主人は、一晩で10~20回このカフェへ。酒をひっかけ暖をとる、力仕事の後に喉を潤す、商談をする、などなどで、みんな『通う』。ざわめきに負けじと大声でカフェを注文したら、5秒でカフェが出てきた!白衣男たちを真似してパテのサンドイッチをかじる。
朝を迎えた市場は、おびただしいゴミの山だ。段ボール、木箱、発泡スチロール、そして廃棄された野菜や肉、魚…。
配送のトラックに代わって、大小さまざまな清掃車が広い場内をみるみるきれいにしていく。市場の南端には専用の焼却場(地図■)があって、ここの熱で市場の暖房の80パーセントをまかなっているという。
そして残った魚や肉を狙うカラスとカモメ。特に内臓の山に群がるカモメ軍団のヒッチコックぶりはすごい。彼らもゴミ処理に雇われているのかもめ。
(稲)
土産が欲しいではないか。せっかくここまで来たのだから。規則では「ランジス市場への出入り、買物にはバイヤーカードが必要」となっている。でも、バイヨンヌのハム塊がすずなりにぶら下がっている(地図★)。つい「下さい」と言ってしまった。忙しい店員さんがチケットを書いてくれる。それを持ってガラス張りのレジへ行き、支払う。会社名を聞かれる。どんな小さな買い物でも、売り手は客の社名入りの立派な領収書を作らなくてはいけない。個人のしみったれな量の買い物につき合っていてはいられないのだ。試みに個人名を言ったら、大丈夫だった。こちらは無駄な努力と知りながらプロのふり。店の人たちは私たちを観光客と100%知りながらも、知らないふりをしてくれ、めでたくハム塊5kgは240フランで我らがものになった。「原則的には、プロじゃない人には売れない
けど」と言いつつ、道具屋さんもオレンジの皮むきを売ってくれた。今度は”bonsai”という植木屋さんで、台湾製ミニ盆栽を店員さんに差し出した。
「商業手帳か市場通行パスを見せて下さい」と言われ、淋しく手ブラで外に出た。プロの壁は厚かった。
高速A106の西側の市場とはまるで別世界の古いランジスの町に、17世紀の初めマリー・ド・メディシスがパリへ引いた水道の源泉が数カ所残っています。
民家の庭にある1号泉の石造りの監視小屋を見ていたら、水道局に勤めているというご主人が内部まで見せてくれた。地下深くに光る湧水は、今でもモンスリ浄水場へ送られているという。水道、空港、高速、そして市場と、パリ市民はランジスに足を向けて寝たりしては、ケシカランのジス!
(稲)
カフェでひと眠り。