● La vie est belle
すでに何度も映画の主題になったナチスによるユダヤ人虐殺 の一部を現代イタリアコミックの花形ロベルト・ベニーニが描く。理想の女性「王女様」をファシストの手からもぎりとり、妻としてめとった幸せ者グイドは、ユダヤ人であるがために幼い息子と共に幸せな生活から恐ろしい現実の世界へ引き込まれる。
根底に流れる家族の絆、父親の子どもへの愛、という素晴らしくシンプルで人間的なテーマを描くのに、なぜこのような虐殺の歴史の舞台を借りなくてはならなかったのか?主人公の、すべては「悪夢」であり、「寓話と遊び」であってほしいという願いが、ベニーニの選択 (「軽さ」 を通して事の重大さを表現する方法) に象徴されていることは確かである。息子の命を守ろうと自らをなげうち、ピエロのごとく振る舞いながら息子に嘘八百を語って聞かせる父親 (ベニーニ) の姿はおかしくて哀しくて…心打たれることは否めない。
マルクス兄弟の最高傑作「我輩はカモである」や、クロスビーが生き生きとしていた「我が道を往く」などを撮った名匠レオ・マッケリーの「明日は来たらずPlace aux jeunes」が必見。子のもとに別々に引き取られた老夫婦の悲喜劇。小津の「東京物語」の原型のような作品だ。
ヒッチコックのお馴染み「北北西に進路をとれ La mort aux trousses」は総天然色、シネマスコープの新コピー。映画の醍醐味が甦る。そういえば、「アリゾナ・ドリーム」でヴィンセント・ガロが、トウモロコシ畑を逃げ回るケーリー・グラントの真似をするんだけれど、すごくうまかった!
「暗黒街の女 Traquenard」は、ニコラス・レイが58年に撮った作品。ギャングの親玉に愛される踊り子シド・チャリシー (!) と暗黒街の色に染まった弁護士ロバート・テイラー (!) のコンビは一度見たら忘れられない、レイならではの暗い輝きを放つ傑作だ。
(真)
*Place aux jeunes / Reflet Medicis(5e)
*La mort aux trousses / Action Ecoles (5e)
Elysees Lincoln (8e)
*Traquenard / Action Christine (6e)