L’INVITE DE L’HIVER 監督:アラン・リックマン
原題は『THE WINTER GUEST』というこの作品では、実の母娘が映画の中でも母娘役を演じている。
スコットランドの海辺の町。最愛の夫を亡くし、絶望の谷間におちこんだ写真家 (E・トンプソン) と、娘にもう一度「生きる喜び」を取り戻させてやりたい、と思う母親 (P・ロウ) の一日が描かれていく。口は達者だが、老いを隠し切れない母親の震える手元、おぼつかない足元・・・・など、老いと死は誰にでもやってきて、また誰もそれを止めることができないということを、この作品では嫌というほど思い知らされる。
そんな母娘の一日に平行して、写真家の息子と彼に熱をあげる少女、学校をサボった二人の中学生、地域の葬儀に参加することを生きがいにする二人の老女、と3組の人々の一日が存在する。それぞれの上にのしかかるのは「生と死」の問題。あどけない表情の残る中学生は、凍てつく海の透き通った美しさを見ながら「自分は明日死ぬかもしれない」とつぶやき、霧のたちこめる海へと歩を進める。老女たちは他人の死を見届けることで自己の残り少ない余生を謳歌している。写真家の息子は、死んだ父親の影を背負うばかりに、せっかくの彼女をモノにすることができずに一日を終える。
俳優アラン・リックマンは初めてメガホンをとり、もともと舞台用として書かれた脚本を映画化した。母娘の話が主となるはずなのに、編集のまずさからか、話があまりに交差するので、気持ちを集中するのに苦労する。やはり母娘の関係を描いたベルイマンの『秋のソナタ』の足下にも及ばないが、二人の母娘の演技はさすが、繊細さに満ちている。(海)
◆ Les visiteurs II
フランス喜劇としては、空前の大ヒットとなった “Les Visiteurs” の続きです。金がかかっていて特撮は前回よりよくできているけれど、クリスチァン・クラヴィエの一人舞台に近く、ヒステリックで下品なギャグがうるさい! 現代のフュネスになるにはまだ時間がかかりそう。ジャン・レノに元気がないし、なんとヴァレリー・ルメルシエが出ていないのです! でも一緒に行った子供たちは大笑いしていました。
◆ 黒澤明特集
悪役の月形龍之介が印象に残るデビュー作「姿三四郎」(3日、13日)、黒澤自身が一番愛している「白痴」(9日、15日)、ベネチア映画祭で金獅子賞をとった「羅生門」(14日)、映像美の極致といってもいい「蜘蛛の巣城」(4日)、山本周五郎流の人生模様をみごとに描いた「赤ひげ」(8日、16日)、ラストの決闘シーンが圧巻の「椿三十郎」(5日、17日)など。
*Elysees Lincoln : 14 rue de Lincoln 8e 01.4359.3614