日本の今を浮かび上がらせる映画たち。特集は想田和弘監督。
日本映画を照らし出す “金の太陽”、「KINOTAYO (キノタヨ) 現代日本映画祭」が、今年もパリで開催へ。会場は日本文化会館、期間は12月6日から17日迄となっている。
今年のコンペティション部門はジャンルも様々。二宮和也(嵐)が主演の『浅田家!』は、前作『湯を沸かすほどの熱い愛』で注目を集めた中野量太監督の作品。一風変わった家族写真で木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家、浅田政志の実話を基にしたドラマだ。震災の記憶までしっかりと物語に刻まれている。コメディ要素もある本作は、仏ヴズール・アジア映画祭で上映された際には会場を笑いに包み、観客の反応は上々だった。平均して満足度が高い観客賞向きの秀作だろう。フランスでは劇場公開を2023年1月25日に控える。キノタヨでは12月15日の上映時に、中野量太監督と写真家の浅田政志、小川真司プロデューサーが来場予定だ。
一方、佐向大監督『夜を走る』は、映画の公開規模は小さいながらも、本年度の日本映画の大きな収穫となった一本。スクラップ工場で働くダメ男たちの日常や脱線、疾走とその行方を追いかける。佐向監督は第4回のキノタヨでソレイユ・ドール新人賞受賞の映画『休暇』(門井 肇監督)の脚本家でもある。『浅田家!』とは別方向のベクトルで、現代社会の裏側を皮肉を込め鋭く活写。世界の映画祭が選出し忘れた、恐るべき突然変異種的作品だ。観た人の心に深い傷跡を残せるこの映画を選べたキノタヨは偉かった。
他にも在日コリアンの実母を通して、家族と朝鮮半島の歴史を見つめるヤン・ヨンヒ監督のドキュメンタリー『スープとイデオロギー』、父親に虐待された親友の遺骨と旅に出るタナダユキ監督のロードムービー『マイ・ブロークン・マリコ』など、コンペには厳選された話題の日本映画全7本が並んだ。
特集上映はドキュメンタリー映画の旗手、想田和弘監督作品を集めた「知られざる日本」。カメラの先に広がるのは選挙活動の現場、瀬戸内海の港町、精神科の診療所……。想田監督が編み出した撮影方法は、先入観を最大限に排除しながら現実とガチンコで向き合う「観察映画」だ。その実践から浮かび上がる日本は、テレビが垂れ流す虚構とは違った表情をしているだろう。想田監督は柏木規与子プロデューサーとともに映画祭に来場予定。12月10日には映画『精神0』(フランスでは「Professeur Yamamoto part à la retraite」のタイトルで2023年1月4日劇場公開)上映後にマスタークラスも実施する。
12月6日夜のオープニング上映作品は、ベネチア映画祭に出品された深田晃司監督『LOVE LIFE』(フランスでは2023年4月26日劇場公開)。12月16日夜のクロージング上映作品は、アヌシー映画祭で審査員メンションを受賞をしたピエール・フォルデス監督の『めくらやなぎと眠る女』(フランスでは2023年3月22日劇場公開)。原作は村上春樹の短編集であり、村上ワールドとフレンチ・アニメとの融合に期待が高まる。(瑞)
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◆ オープニング作品
『LOVE LIFE』深田晃司監督(6日19:15、上映前にオープニングセレモニーあり )
◆ クロージング作品
『めくらやなぎと眠る女』ピエール・フォルデス監督(16日19:30、上映前にクロージングセレモニーあり )
◆ コンペティション部門
『空白』吉田恵輔監督(7日19:30、13日16:00)
『ちょっと思い出しただけ』松居大悟監督(8日14:00, 13日19:30)
『浅田家!』中野量太監督(7日15:00, 15日19:00**)
『とら男』村山和也監督(8日19:30, 15日15:30)
『スープとイデオロギー』ヤン・ヨンヒ監督(10日20:30, 16日14:00)
『夜を走る』佐向大監督(9日20:30, 14日13:30)
『マイ・ブロークン・マリコ』タナダユキ監督(9日14:00, 14日19:30)
◆ 想田和弘監督レトロスペクティブ
『選挙』(6日14:00*, 17日14:00)
『選挙2』(6日16:30, 17日16:45)
『精神』 (10日13:30*, 16日16:30)
『PEACE』(7日17:45*, 15日13:30)
『牡蠣工場』(9日16:15*, 14日16:15)
『港町』(8日16:45*, 13日13:15)
『精神0』(10日16:45***, 17日19:00)
* 監督来場
** 中野量太監督・浅田政志氏来場
*** 想田和弘監督来場/作品上映後、18:45より監督マスタークラス
➡︎第16回 キノタヨ現代日本映画祭
https://kinotayo.fr/jp
➡︎上映スケジュール
https://kinotayo.fr/jp/agenda
➡︎チケット購入はこちら
https://mcj.shop.secutix.com/selection/event/date?productId=10228757913330
Maison de la culture du Japon à Paris (MCJP)
Adresse : 101 bis, quai Branly , Paris , FranceTEL : 01 44 37 95 01
アクセス : Bir-Hakeim (ligne 6) /RER C:Champ-de-Mars Tour Eiffel
URL : https://www.mcjp.fr/