この2月からラ・ヴィレットの科学産業博物館では、8K(7,680×4,320/約3300万画素)のデジタルプラネタリウムが楽しめるようになった。平均的なHDテレビの8倍に当たる解像度で、世界では米ヒューストンに次ぎ2番目、欧州では初登場という最新鋭のシステムを誇る。
今回は同博物館で開催中の中世に関する企画展の連動プログラム「Le ciel au Moyen Âge 中世の空」を鑑賞した。中世の人々が抱いた宇宙のヴィジョンと、その進化の過程を紹介する壮大な内容である。837年のハレー彗星の接近や1054年のスーパーノヴァ(超新星爆発)などの重要な天体運動に触れていくが、眼前に広がる幻想的な宇宙の世界には、ただただ圧倒される。360°全方向に広がるハイパーリアリズムの世界を堪能するには、場内の中心の席がお勧めだ。10台のソニー製プロジェクターを駆使し、天体とともに地図やイラストまで浮かび上がらせるのが、従来のプラネタリウムの概念を超えている。政治と天文学が密接な関係を結んだ9世紀のドイツ・アーヘンや、天文学が発展した11世紀のスペイン・トレドなどを舞台に、知られざる天文史を立体的な時空旅行で楽しく学べた。また最新鋭と謳ってはいるが、解説の声は録音でなく、あくまでスタッフが同博物館のオリジナル脚本を一生懸命聞かせてくれるのもいい。
パリはいつからか公害(大気汚染)と光害(照明で夜空が明るくなる害)に悩まされ、肉眼で天体観測をするのが難しくなった。せめてプラネタリウムで気軽に宇宙の神秘に触れてほしい。なお国内では今後、航空・宇宙開発産業で名高いトゥールーズのCité de l’espaceで、同種の8Kプラネタリウムが設置される予定だ。(瑞)
展覧会チケット込みのプラネタリウム入場券は大人 12€ / 25歳以下 9€ (プラネタリウムは2歳未満入場不可)
現在は2本のプログラム「Le ciel au Moyen Âge」(12h)と 「Entre Terre et ciel… la Lune」(11hと14h)を上映。7月9日まで。
Cité des sciences et de l'industrie
Adresse : 30 avenue Corentin Cariou, 75019 Parisアクセス : M° Porte de la Villette