前号では牛のほお肉料理を紹介したけれど、今回は豚のほお肉が登場です。だいぶ前に、この肉をハチミツやリンゴと煮込む一品を書いたことがあるけれど、今回はカシス(黒スグリ)風味のリキュールも入った、少々甘く香り高い赤ワイン煮。
臓物屋に出かけて豚のほお肉を1キロ買ってくる。10個くらいになるだろう。これで13ユーロ前後と安いのがうれしい。牛のほお肉よりはかなり小さいので、切り分ける必要はないけれど、ちょっと面倒でも、よく切れるペティナイフを使って薄皮を切りとった方がいい。
長ネギは白いところだけを、できるだけ細かくみじん切りにする。今回は玉ネギの中でもまろやかな風味の紫玉ネギを使うのだが、これも同様にみじん切り。ニンニクは押しつぶしておく。
オーブンに入れることができるココット鍋にオリーブ油をとり、中火にかける。油が熱くなったら、しっかりと塩、コショウしたほお肉を入れ、両面にきれいな焼き色をつけたい。ここでバターを加え、軽く色がついてきたら、長ネギと玉ネギ、ニンニクを加える。それがしんなりしたら、クレーム・ド・カシス(右のコラム参照)を半カップほど注ぐ。次はコット・デュ・ローヌなどの赤ワインを、肉が7分目かぶるくらいに入れ、さらに肉がすっかりかぶるように鶏ガラのブイヨンか水を加える。混ぜ合わせて再沸騰してきたらふたをし、目盛りを180度に合わせて熱くしておいたオーブンに入れ、1時間20分ほど火を通す。オーブンがなかったら、そのまま弱火で煮込んでいくことにしよう。
オーブンから出せば、肉はすっかりやわらかくなっているだろう。煮汁が多いようなら、絶えずその煮汁を肉にかけつつ、とろりとするまで煮詰める。必要なら、塩とコショウで味を調える。付け合わせはゆでジャガイモかマッシュポテト。
豚のほお肉はソテーやローストには不向きだが、ベルギー風にビール煮にしたり、カレーに入れるとうまい。(真)
4人分:豚のほお肉1kg、長ネギ1本、紫玉ネギ1個、ニンニク2片、クレーム・ド・カシス100cc、赤ワイン適量、鶏ガラのブイヨン適量、オリーブ油、バター、塩、コショウ。
Oignon rouge
フランスの八百屋には3種類の玉ネギが置いてある。一番よく使われるおなじみの玉ネギはoignon jaune、白い玉のoignon blanc、今回のレシピに使った紫玉ねぎはoignon rouge。紫玉ねぎは柔らかな味わいで甘味も感じられる。薄く切ってサラダに加えるのが一般的だが、ほとんど辛くないので水にさらす必要もない。やはり薄く切ったものを、スズキやタイのカルパッチョの上にのせると、白身の魚と、年輪のように赤と白が混じる紫玉ネギのコントラストが美しい。値段はふつうの玉ネギの倍はするが、サラダ用に1個とか2個、台所に常備しておきたいものだ。
Chou rouge
紫玉ネギと同じような赤紫色で、ほとんどまん丸い形のキャベツが紫キャベツchou rouge。冬ならではの野菜だ。玉がしっかりと締まり重たいものを選ぶこと。フランスではどこの総菜屋にも、紫キャベツのせん切りのサラダが並んでいる。まず外側の葉を3、4枚はがす。四つ割りにする。かなり力がいる作業だ。固い芯を切りのぞき、できるだけ薄いせん切りにする。これを、マスタードをきかせたビネグレットソースと和えてしばらく置いてから、パセリをたっぷり散らして食卓へ。クルミやロックフォールをくだいて混ぜ入れればさらにうまい。