マリナ・メニニさん
ここ数年、世界の料理業界では日本製の包丁が大ブーム。もちろんフランスも例外ではない。しかし、西洋の包丁に比べて刃が薄く鋼材が硬い日本の包丁は、西洋の研ぎ技術では上手に研ぐことができない。そこで、料理人たちに日本の砥石を使った研ぎの技術を伝えているのが、Couteaulogue (包丁専門家)のマリナ・メニニさんだ。
マリナさんの母親は日本人、父親はフランス人。ともに日本語教師で「家の中の文化は完全に日本」だったという。生まれてから3歳まで東京で育ち、その後フランスへ。アルザス、トゥールーズを経てパリのデザイン学校で学び、ロンドンの美術大学で学位を取得した。ロンドンの人気カフェのアルバイトを通して料理の楽しさに目覚め、日本でも料理の仕事を経験してみたいと再び日本へ。高級寿司店やホテルのキッチンで働いた。ニューヨークのイタリアン・レストランでパティシエも経験。しばらく料理の仕事を続けるうちに、毎日使う料理道具への興味が募った。
東京へ戻り、道具についての知識を深めるべく合羽橋の老舗道具店で働き始めた。道具をひとつひとつ学ぶ中、最も心ひかれたのが和包丁。販売を担当する傍ら、店に数十年勤める大ベテランから研ぎや名入れの技術の指導を受けた。また、今なお伝統製法を貫く本場、大阪の堺を度々訪れ、現地の職人から直接貴重な知識を得ることもできた。
勤め始めた頃、店を訪れる外国人客は少なかったが、マリナさんに英語とフランス語で詳しく説明を受けて道具を買える、と評判が評判を呼び、外国人の客が増え始めた。また、和包丁についてより深く知りたいというリクエストが増えたため、大使館のシェフやアメリカの料理学校の生徒を対象とした刃物についてのセミナーも開くようになった。この頃から勤務先の店がパリで展示会やセミナーも行うようになり、全体のオーガナイズや招待客の管理なども一手に請け負った。
いつかはフランスに戻り、包丁に関連したことで独立しようと考えていた、というマリナさん。お子さんの誕生を期に、パリに活動の場を移す。フランスにも日本の包丁を持っている料理人はたくさんいるが、砥石による研ぎの技術を知らないため、クオリティの高い包丁が実力を発揮できていない。そんな現状を知り、プロの料理人向けに包丁研ぎのセミナーを行うようになった。顧客には有名レストランの料理人たちが名を連ねる。また、権威ある料理の世界大会であるボキューズ・ドールのフランス代表への研ぎのセミナーと、予選から本大会まで定期的にメンバー全員の包丁研ぎも担当し、道具の面からサポートしている。
最近力を入れたいと考えているのは、料理学校での授業。ここ数年はフランスとスペインの学校で、日本の刃物とメンテナンスに関する入門授業を行っている 。「未来の料理人に道具をレスペクトすることを教えたい。包丁と砥石はセット。自分の道具を手に合うように育てていく大切さを知ってほしいんです」。一般向けの包丁研ぎ教室も月に一度行われているので、プロの指導でご自宅の包丁をピカピカに蘇らせてみてはいかがだろうか?(恵)
E-mail : marina@domapress.com
一般向け包丁研ぎグループレッスン
次回は3月11日(月)18h30-20h30
1名40€。
プロの方は予約の上でプライベートレッスン可。包丁の研ぎサービスも受付。
Atelier DOMA
Adresse : 17 avenue Ledru-Rollin, 75012 Parisアクセス : M°Gare de Lyon / Quai de la Rapée