クリストフ・フェレラさん
日本のアニメ業界で活躍する数少ないフランス人アニメーター、クリストフ・フェレラさん。パリの名門映像学校ゴブランを卒業後、アニメ界の巨匠・大塚康生氏の紹介で03年に日本で研修を経験。06年より日本に再び滞在し、TVアニメ 『LUPIN the Third〜峰不二子という女〜』など様々なプロジェクトに参加。7月12日からはスタッフとして名を連ねる、神山健治監督『ひるね姫~知らないワタシの物語~/Hirune Hime, Rêves éveillés』がフランスで劇場公開される。
東京オリンピックを目前に控えた2020年。倉敷在住の女子高生ココネは、機械工の父を警察に連行されてしまう。残されたのは自動運転のプログラムが入ったタブレットPC。夢の中で魔法が使える彼女は、仲間の力を借りながら陰謀に立ち向かう。科学技術と魔法の対比、世代間の対立、家族の絆と、多様なテーマが交錯する野心的な近未来ファンタジーだ。
フェレラさんは絵コンテや原画、クリーチャーデザイン(人間ではないキャラクターのデザイン)と幅広い作業を一手に担う。とりわけ謎を解く鍵となる夢のシーンを中心に描いた。「フランスはアメリカに似て分業化されがち。日本はワンカットあればその全てを描ける技術が要る。人物から装飾、背景、火や水まで描くため、完全な形で仕事を学べるのがいい」。
しかし労働条件は厳しい。「働く時間が長いから家族を持てない人も多いんだ」。日本は作品が当たっても現場の人や製作スタジオにお金が流れず、出資した権利者が儲かる仕組み。一方、フランスは著作権がうまく配分され、CNC (国立映画・映像センター)からの援助も手厚い。アニメーターもアンテルミタン・デュ・スペクタクル (芸術分野の不定期労働者)となれるため社会保障も行き届く。「日本の現場は情熱とエネルギーに満ち素晴らしい。でもモチベーションが高くないと続かない」。それでも大好きな日本で得られた貴重な経験を分かち合うべく、日本のアニメ業界で働く人や、これから働きたい人に情報提供をするアソシエーション「フランス人コネクション」* を仲間と立ち上げた。
クリストフさんは日本でパートナーと出会い、本作制作中には第二子も誕生した。「だから『ひるね姫』の中でも親子に関する部分が心に響く」とか。家族を持ってからは、時間を自由に管理できるバンドデシネ作家としても活躍中。ラーメンや餃子、つけ麺に夢中という彼は、日本文化に心酔しているが、家族を大切にする感覚はフランス人のままのよう。いつか日本の物語は描かないのですか?「思春期の頃に毎週末、郊外からパリのジュンク堂に通って漫画を漁り、アニメ好きの仲間と交流していた。日本で働く夢が叶った自分の体験をいつか作品にしてみたいな」。(瑞)
『ひるね姫』夢の世界や、登場人物などのスケッチなど、フェレラさんの幻想的な作品が投稿されるFB。https://www.facebook.com/christophe.ferreira.100