ドーミエのパレットなど(19世紀中頃)
複雑化する現代社会で、風刺画は難しい立場に立たされるようになってきた。だがもとは権力者や支配者に放つ痛烈な一矢。批判精神や機知を武器に、歪んだ政治や社会を皮肉る立派な伝統文化だ。風刺画家オノレ・ドーミエの作品は人間の内面までも真空パックにして生き生きと後世に伝える。1830年にシャルル・フィリポンが創刊した風刺新聞『カリカチュール』で腕を振るったドーミエは、時の国王ルイ・フィリップを「洋梨」に模した作品群でたちまち評判に。王の下ぶくれの顔に加え、梨が暗示する「間抜け」のイメージにぴったりだったようだ。彼の版画や絵画、彫刻、そして絵の具の跡がたっぷり残るパレットを陳列する。
ミュシャがデザインした宝飾店(1901)
コンコルドとマドレーヌの間をつなぐロワイヤル通り6番地に1901年に誕生した、世にも美しいベルエポックの宝飾店を再現。父の店を受け継いだ金銀細工師で宝飾商のジョルジュ・フーケが、チェコ人でアール・ヌーヴォーの旗手アルフォンス・ミュシャに改装を依頼。ミュシャは内装やファサード、家具や装飾品まで一手に担った。
孔雀や女性のブロンズ像が迎える空間は、天井から床、壁のステンドグラスに至るまで、一寸の隙もないほど耽美的。開店当時もミュシャの仕事は熱狂的に受け入れられ、アートの水準に昇華された店として絶賛された。1941年に寄贈され、同博物館ではひときわ人気の高い自慢の部屋である。
プルーストのベッドほか (19 – 20世紀)
ベッドを中心に、東洋趣味の屏風、ランプなど、マルセル・プルーストが度重なる引っ越しにもかかわらず手放さなかった家具や、ステッキ、コートなどの遺品を置き、プルーストの部屋を再現。
喘息を患い外出も少なくなり、このベッドの上で『失われた時を求めて』の大部分を書いたという。1922年プルースト没後、彼の弟ロベールが家具や遺稿を受け継いだが、ロベールが亡くなると彼の妻がその一部を手放し散逸しかけた。それを買った人物が博物館に寄付して今日に至っている。騒音に敏感だったプルーストが防音のために使ったというコルクの板も一部壁に貼ってある。部屋にあるヘッドホンで小説の朗読を聞くこともできる。
◎ INFORMATIONS
Musée Carnavalet – Histoire de Paris
23 rue de Sévigné 3e Tél : 01.4459.5858
M°Saint-Paul / Chemin Vert
月休、10h-18h、常設展無料。 要予約。
www.carnavalet.paris.fr
Musée Carnavalet - Histoire de Paris
Adresse : 23 rue de Sévigné 3e , 75003 Paris , FranceTEL : 01.4459.5858
アクセス : M°Saint-Paul / Chemin Vert
URL : https://www.carnavalet.paris.fr/
月休、10h-18h、常設展無料。 要予約。