L’Age atomique, les artistes à l’épreuve de l’histoire
ウクライナ戦争でロシアが核を使うと威嚇し、中東ではイスラエルがイランの核施設を攻撃して緊張が高まっている今、見ておきたい展覧会だが、もどかしさも感じた。
会場はほぼ時系列で構成されている。19世紀終わりに放射線が発見され、物質は通り抜けられない強固なものであるという観念が覆された。アーティストたちはそこに新たな芸術表現の可能性をみた。スウェーデンの画家、ヒルマ・アフ・クリントは、神秘主義に基づいて原子の動きを水彩画で表した。米国出身のダンサーのロイ・フラーは、キュリー夫妻の列席のもとで、放射性のある閃ウラン鉱をベールに散りばめて「ラジウム・ダンス」を踊った。
しかし、米国が「マンハッタン計画」で開発した原爆を1945年8月に広島と長崎に投下したことで、科学への期待は飛び散ったかに見えた。会場では被爆者が当時の記憶をもとに1970年代に描いた水彩画を展示し、被爆の悲惨さを伝えている。だが日本は1952年まで連合軍占領下にあり、長い間原爆被害の実態は米国の圧力で隠蔽(いんぺい)されていた。一般市民が初めて実態を知ったのは、1951年に京大が主催した総合原爆展の時からだ。国内ですらそうだったのだから、原爆投下後の数年間、核の恐ろしさをわかるアーティストが外国にどれほどいただろうか。この後の展示作品を見てその疑問が湧いた。原爆投下のニュースを聞いて、すぐに原子力をテーマにした絵(会場で展示)を描き、「原子力時代の初の画家」を自称したダリ。仏当局に核実験にクライン・ブルーを使うように提案し、巨大なアート作品を出現させることを試みたイヴ・クライン。イタリアでは「真実は原子にある」として、原爆投下を機に1951年に芸術運動 「アルテ・ヌクレアーレ」が起きた。作品が出ているが、表面的な紹介で終わっているので、どういう運動なのか、よくわからない。全般的に説明不足が難点だ。『はだしのゲン』がせっかく大きく張り出されているのに、セリフが翻訳されておらず、残念だった。日本人なら鉄腕アトムとゴジラも紹介してほしいところだが、どちらもない。会場半ばでは、どうして展示品に含まれているのかわからない作品が多かった。後半では、反核運動、チェルノブイリ、福島が出てきてわかりやすい。一番よかったのは、1966年に英BBCのためにピーター・ワトキンスが制作したが、ショッキングなためテレビ枠では放映されなかった、核攻撃後の英国を描いたフィクション『 The War Game』を会場内スクリーンで見られたこと。広島、長崎の現実には及ばないが、力作だ。(羽)2/9迄
Musée d'art moderne de Paris
Adresse : 11 avenue du Président Wilson, 75016 ParisTEL : 01.5367.4000
URL : https://www.mam.paris.fr
火〜日 10h-18h (木-21h30) 15€/13€ /18歳未満無料。