異文化が引き起こすデリケートな摩擦を笑いに変え、国内1240万人の動員を記録した前作から4年。フランスで5人に1人が観たメガヒット作品の続編だ。ロワール地方に住むブルジョワ階級のヴェルヌイユ夫妻は、「偉大なフランスの栄光」を求めるドゴール主義的価値観に則り生きてきた。夫妻の思惑とは裏腹に、彼らの4人娘はユダヤ、アラブ、中国、アフリカと、それぞれ外国の血をひく相手と結婚した。動揺する夫妻は気を取り直し、婿たちの国を発見する旅に出ると約束。それが前作までの流れだが、本作はその異文化発見の旅の帰還から幕開けだ。無事に帰国しホッと一息も束の間、新たな問題が発生する。娘夫婦らはみな一斉に、外国暮らしを計画し始めたのだ。夫妻はそれを思いとどまらせようと画策する……。
思えば前作は「フランスの栄光」を無邪気に語れた最後の時代の映画だった。あれからフランスはテロに見舞われ、欧州では移民排斥の機運が高まった。あるいは同性婚問題の関心も高まり、意識の変化も進んだ。フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督はそんな時代の流れを汲み、脚本に反映させている。
例えば外国人排斥を恐れる中国人婿は、恐怖が海外脱出への理由の一つにさえなっている。また、ヴェルヌイユ家の主(あるじ)は、タリバンとタリバンの被害者をゴッチャにして恐れ、挙句の果てにとんでもない行動に出る。そんな彼らの堂々たる「思考停止ぶり」は大いに笑いを誘うが、決して絵空事ではない。日本人も身につまされることがあるのでは。それでも登場人物たちは新たな課題に直面しながらも、三歩進んで二歩下がりの成長を続ける。「フランスの栄光」のイメージに頼り過ぎてしくじるマクロン大統領にも、ぜひ勧めたい一本だ。(瑞)