Metz(メッス)の歴史を語る建築を訪ねて。
ポンピドゥー・センター分館の登場で知名度アップ。
歴史的にも重要で、知れば知るほど興味が尽きぬ町。
ミルフィーユの層のような歴史で世界遺産を狙う。
ポンピドゥー・センター分館は駅から徒歩3分の抜群の立地。そのため日帰りで訪れる人も多いそう。だが駅の反対側こそ歴史的な見所の宝庫だ。町は古代から現代に至るまで多様な変化に晒(さら)され、各時代の遺跡や建築物が残る。だからミルフィーユの層のような歴史が味わえる。とりわけ大聖堂はランスやアミアンに負けぬ美しさ。だが同種のものを船に多くは乗せない「ノアの箱船」方式をとるユネスコ世界遺産は、大聖堂のテーマで登録申請をするのが難しい。
そこでメッスは別テーマで登録を狙う。それが「王国と帝国、様式の対照、都市の特徴と権力」。ドイツ皇帝とフランス王に征服された痕跡が、町に色濃く刻まれているからだ。
お隣のアルザスに比べると観光地の印象が薄めのロレーヌ地方。しかし中心都市メッスは確固たる歴史を持つ実力派。自己主張が苦手な優等生タイプと言えよう。その素顔は歴史のミルフィーユを存分に味わえ、街歩きも心躍る奥深い町なのだ。