パリの新名所 – ピノー財団コレクションを展示
文化施設がいっせいに再開したパリ。待望の「ブルス・ド・コメルス」もついにオープンした。19世紀の歴史的建造物である旧商品取引所を建築家、安藤忠雄氏が改修設計した新しい美術館。実業家フランソワ・ピノー氏が40年間にわたり蒐集してきたコンテンポラリー・アート作品を展示する。
高さ35メートルの、巨大なガラスの丸天井(クーポール)から光が注ぐ。アンリ・ブロンデルが1880年代に設計した円形の建物はそのまま残し、そのなかに高さ9メートルのコンクリート壁を造った安藤氏。新旧を対比させ、「入ってきた人が、『ここはどこなんだ?』とインパクトを受け、現在、過去、未来を同時に体験できる空間」だという。クーポールのすぐ下には、世界4大陸の交易を描いた大壁画。アジアは花魁(おいらん)のようにかんざしを10本ほども挿した女性、烏帽子(えぼし)を被った男性に象徴され、蒸気機関車、煙吐く工場など、産業が勢いよく発達する19世紀の様子が描かれている。総面積は14000㎡、地下と3フロアを使い、ゆったりとした10の展示スペースを設けた。
オープニングを飾る展示は 「Ouverture (開放)」と題されているが、〈開館〉 の意味だけではないという。「Ouvertureはピノー・コレクションのマニフェスト。アートは閉ざされたものではなく、社会に開かれたものだからです」とマルタン・ベトゥノ館長。様々な表現方法の作品を迎え入れ、世界の現実に目を開く。ピノー財団は1960年から今日までの芸術作品を1万点所有するが、蒐集作品には主に二つの傾向がある。ひとつはミニマルで抽象的なもの。米ミニマルアート、60・70年代の仏アヴァンギャルドやイタリアのアルテ・ポーヴェラなど。もう一つは人物を描きながら政治、社会、ジェンダー、人種などのテーマを問う作品で、開館展でも大きく紹介されている。人種問題などをテーマにした作家デイヴィッド・ハモンズを〈ギャラリー2〉で紹介するのは、彼の作品を30年にわたって集めてきたピノー氏のこだわり。同テーマではケリー・ジェームズ・マーシャルなどの作家も紹介。同じ作家を長期間フォローし、コレクションを続けるのも財団の特徴だという。
かつてセーヌ川に浮かぶスガン島に美術館を造る計画が遅々として進まず、 しびれを切らすようにヴェネチアに飛び、2006年と2009年、安藤氏とともに2つの美術館を建てたピノー氏。しかしやはりパリに美術館を開くのが「夢」だったという。財力でなんでもできそうな80歳を超えた実業家の「夢」が、当初の予定より3年遅れて実現した。近寄りがたかったコンテンポラリーアートを、少し近く感じられた日だった。(化)
● Colonne Médicis
1572年、カトリーヌ・ド・メディシスはこの土地を買って自分の館を建てさせた。しかしその館の名残りは中庭にあった 「メディシスの柱 」のみ。占星術師のために王妃が建てさせたとされる。彼女の死後、館の所有者は次々と代わり、取り壊された跡地に1760年代、円形の小麦貯蔵庫Halle aux blés が建てられた。鉄道の発達で町中に多くの小麦を貯蔵する必要がなくなり商品取引所として再建された。
● Halle aux grains
美術館内には3つ星シェフ、ミシェル・ブラスと息子セバスチャンが指揮するレストラン・カフェが6月10日にオープンする。ふたりの本拠地、南仏ライヨールの食材を使い、この建物の歴史に着想を得た料理が楽しめる。 昼メニュー (3品)54€。夜は (会食者全員が同メニュー)78€ (5品)と98€ (7品)。アラカルトも可。昼食(火休):12h – 15h / カフェ : 15h – 19h / 夕食 (無休)19h30 -24h ラストオーダー22h30。
www.halleauxgrains.bras.fr / 01 8271 7160
● Bourse de Commerce – Pinault Collection
2 rue de Viarmes 1er M°Les Halles / Louvre-Rivoli
火休 11h-19h. 金-21h. 14€/10€/18歳未満無料・要予約
www.pinaultcollection.com
Bourse de Commerce - Pinault Collection
Adresse : 2 rue de Viarmes, 75001 Parisアクセス : M°Les Halles / Louvre-Rivoli
URL : http://www.pinaultcollection.com
火休 11h-19h. 金-21h. 14€/10€/18歳未満無料・要予約