妻のバーンアウトでルマンへ。
超・遠距離通勤11年目。フィリップ・モチエさん
フィリップさんは、パソコンMac機種の出張メンテナンスや設置を行う技術者。2008年、住み慣れたパリ郊外を離れ、パリから200km離れたルマンよりさらに40km先の、人口15 000人の町に引っ越した。徒歩・車・TGV・メトロを乗りつぎ、1日約4時間 (距離にして1日約500km)の超・遠距離通勤をこなす。
TGV通勤は、日々時間との戦い。
自宅からルマン市内まで車で40分。カーシェアリングアプリに運転手として登録しているので、自宅近くで同じく駅に向かう他の乗客をピックアップすることも。
ルマン駅周辺には無料の駐車スペースがないため、駅まで徒歩10分の場所に駐車。モンパルナス駅まではTGVで55分。TGVの遅れを想定し、朝一番のアポに必ず間に合うよう、6時前には家を出て6:50発のTGVに乗る毎日だ。パリ市内の移動はメトロ。帰りは時間との戦い。仕事が長引く、メトロが止まる、TGVが遅れる。一つ遅れるだけで、全てがずれこむ。21時前にやっと帰宅。
聞いているだけで疲れる通勤スタイルだが、「通勤の疲れは、週末に広々とした自宅や自然の中で過ごし、家族との団らんで充電しているから大丈夫」と、ポジティブ思考なフィリップさん。
パリ郊外に住んでいた頃は、車とRER、メトロを乗り継ぎ、往復3時間の通勤をこなしていた。早朝、子どもたちをベビーシッターさんに預け、夕食とお風呂を済ませた子どもをピックアップして帰宅。子どもたちとすれ違いの日々に大きな疑問を感じていた頃、同じく技術者の奥さんの残業が増え、帰宅時間が遅くなり、ついにバーンアウト。奥さんの心身の健康を気遣う形で、パリ郊外を離れた。子どもたちがまだ小さかったから、万が一の時に頼れるよう両親や親戚が近くに住むルマン郊外に白羽の矢が立った。
パリ郊外を離れたことに、何の後悔もない。
現在、大学生の息子さんはカナダに留学中、娘さんは地元の高校生。今夏には、現在建築中の新居での生活がスタートする。ということは、超遠距離通勤はまだまだ続く!?
「あちこち動いて、いろいろなお客さんとコミュニケーションが取れる今の仕事が好き。パリのMacユーザーは面白い人が多いしね。しばらくは超遠距離通勤を続けていくつもり。でも、同じような仕事が地元で見つかったら迷わず辞表を出すけどね。とにかく、パリ郊外を離れたことには、何の後悔もないよ」。