La Fabrique de Pain d’épices Mulot & Petitjean
マスタードやカシスで有名な美食の街ディジョンには、もう一つの名産品がある。蜂蜜と香辛料入りのお菓子、パン・デピスだ。中世から欧州各地に存在し、今も愛好者の多いパン・デピス。アルザスと並ぶ産地ディジョンに1796年創業のミュロ&プティジャンの博物館があるというので行ってみた。今も伝統的な手法を守っている無形文化財企業(EPV)だ。
パン・デピスの起源は中国兵士の保存食だったハチミツ・香草入り菓子「Mi-Kongミ・コン」とされる。蒙古軍と十字軍によって12〜13世紀に中東からヨーロッパにもたらされ、ドイツ、ハンガリー、オランダ、ベルギーなどに伝わり、各地の修道院で作られるようになった。フランスではまずアルザスやランスに伝播。ランスは16世紀にはパン・デピス協同組合を持つほどの産地だったが、第1次大戦ですたれ、ディジョンに取って代わられた。
ディジョンにはブルゴーニュ公フィリップ2世にフランドルから嫁いできたマルグリット3世が14世紀に伝えたとされる。ただし、パン・デピス作りが盛んになったのはバルナべ・ボワティエが1796年にディジョンで製造販売を始めてからで、それはルイ・ミュロから息子の娘婿ルイ=オーギュスト・プティジャンに引き継がれた。これが現在も続くミュロ&プティジャンだ。ディジョンの伝統的パン・デピスはライ麦粉を使うアルザスやランスと違って小麦粉を使い、香辛料は主にアニス。19世紀後半から第2次大戦までは12軒の製造者がいたが、大手食品会社の参入で、今も残っているのはミュロ&プティジャンだけ。
同社の工場兼博物館はディジョン駅北側の小高い丘の上にある。2016年に工場の改修とともに博物館が増設された。パン・デピスと同社の歴史、原料、道具、さまざまな昔の型などが展示されている。工場をガラス越しに見ながら製造工程をビデオで見る。シロップと蜂蜜(百花蜜)を混ぜたものに小麦粉を加えて練り数週間寝かせる。その後、香辛料、卵黄、ベーキングパウダーを加えた生地を冷蔵し、切ったり、型に入れたり、型抜きをしたりして焼き上げる。かなり自動化されているが、型抜きや型から出す作業、メレンゲを塗ったり、果物コンフィで飾るなど手作業もかなりある。バターもミルクも入っていないので5〜6ヵ月も持つそうだ。伝統的な「Pavé」(6kg)が一番人気で、12個にカットして売られており、甘さ控えめなので朝食やフォアグラのお供向き。そのほか、パウンドケーキ形や木靴、ブタ、復活祭向けの魚や鶏など様々な形状がある。
Pavé に次ぐ人気商品はパン・デピスにジャムを入れたノネット(nonnette)。中世に修道女(nonne)が作り始めたことからこの名がある。ランス生まれだが、ディジョンの特産品になり、乾いた感触のパン・デピスにしっとり感を与える。元祖はオレンジジャムだが、カシスやアプリコットなど種類もいろいろ。見学の最後には味見もあるのでお楽しみに。(し)
◎Informations
La Fabrique de Pain d’épices Mulot & Petitjean
6 bd de l’Ouest 21000 Dijon
Tél:03.8066.3080
火-土:10h-12h30/14h-18h30
8€/6€(12~17歳)/11歳以下無料
パリからディジョンまでTGVで約90分。
国鉄Dijon Ville駅から徒歩13分。
◎Mulot & Petitjean 本店
13 pl.Bossuet 21000 Dijon
Tél:03.8030.2245