この連載の1回目に、フランス料理に欠かせない道具としてココット鍋をとり上げたが、同じくらいによく使われるのがソトゥーズsauteuseという、長い柄がついた、底が広く浅い鍋だ。
なによりもきちんとふたができるのが長所だ。ソトゥーズにバターやオリーブ油をとり、ニンジンやサヤインゲン、あるいはマッシュルームなどを加え、鍋をまわすようにしながらさっといため、塩コショウし、水少々を加え、ふたをすれば、蒸し煮のように調理できる。ムール貝の殻をあけるときにも活躍。ソトゥーズに白ワインを1カップほど注ぎ、沸騰してきたら貝を重ならないように入れ、強火にし、ふたをする。沸騰してきたら一度大きく混ぜ合わせ、またふたをし、殻が開きはじめたら網じゃくしでとり出し、むき身にする。煮汁はこしてからソースにつかえる。
この鍋が本領を発揮するのはソテーsautéと呼ばれる煮込みだ。切り分けた肉をソトゥーズを使って強火でいためてから、ブイヨンやワインなどを生クリームを注いで煮込んだ料理で、その煮汁を煮つめてソースにする。たとえば鶏肉とジャンランという北部のビール風味のソテーをぜひ試してほしい。
ソトゥーズごとオーブンに入れて仕上げることもあるので、柄やふたの取っ手がステンレス製など熱に耐えるものを選びたい。オーブンから出すときに火傷しないように気をつけましょう。
もう一つほしい鍋といったら寸胴(ずんどう)鍋marmiteだろう。直径と深さがほとんど同じなので容量が大きく、その割に蒸発面が小さいから、鶏ガラのブイヨンをつくったり、長時間かけてポトフやポテを煮込んだり、あるいはパスタをゆでるときに大いに役に立つ。直径24センチのものから50センチをこえる給食用の巨大なものまであるけれど、四人から六人用なら直径28センチ、深さ24センチ前後のものが適当だろう。ステンレス製を選びたい。
marmiteよりも深くなく、たとえば直径28センチで深さ15センチくらいの鍋はfaitout(万能といった意味)と呼ばれ、パスタをゆでるときだけでなく、キャベツやホウレンソウの下ゆでや煮込み料理(和風ならおでん)など、名前通り出番が多いし、少人数の家庭にはmarmite より向いているかもしれない。(真)
Outils pour le dessert
デザート作りの道具
この連載で、「デザートは、三つくらいはマスターしたい」と題し、サックランボのクラフティ、リンゴのタルト、チョコレートケーキを例にあげた。こんなデザートをオーブンで焼くときにどんな道具を用意すればいいのだろう。
生地づくりにはめん棒rouleau à pâtisserieがいる。1時間ほど前に生地を冷蔵庫から出しておき、作業台に小麦粉を薄くふってから、3センチほどの厚さにのばす。生地でおおうタイプのタルトを焼くときには、生地にきれいな焼き色がつくように、丁寧に割りほぐした卵黄を塗る刷毛が必要になるだろう。
クラフティやタルトなら直径27、8センチの浅い型がいい。生地をおさめる前に薄くバターを塗ること、生地をおさめたら底をまんべんなくフォークでつっつくことを忘れないようにしたい。チョコレートやクルミのケーキには直径24センチくらいでやや深めの型がいい。チョコレートや砂糖衣でコーティングすることが多いので、型からとり出しやすいようにテフロン加工のものがいい。バナナや洋ナシのケイク(ケーキ)にはケイク専用の型がある。
チョコレートケーキなどのたねは型に流し込むときにボウルに残りがちだ。イラストのようなへらmaryseは、先がゴム製で柔軟なので、残らずかき出せて便利。
ケーキをメレンゲやバタークリームでデコレーションするときには、しぼり出しpoche à douilleをつかうときれいに仕上がるだろう。
チョコレートケーキなどは焼き上がってから10分ほど待ち、型に網台grille à pâteisserieをかぶせ、クルッとひっくり返して型から抜き、そのまま冷まし、コーティングすればいい。