前回書いたように、ふだんは1リットル4ユーロのメルロ種の赤で大満足のぼくでも、ワイン好きの友だちが来たり、誰かさんの誕生日やノエルでごちそうを作るときは奮発する。カーブに2ダースほどある少し上等のワインから、メニューを頭に入れつつ選ぶことになる。そんなせっかくのワイン、できるだけおいしく味わいたい。
白ワイン、赤ワインの適温
白ワインは冷やして、というのが常識になっているけれど、冷やしすぎては白ワインならではのやさしい香りが開かない。9度から12度くらいというのが適温だ。かといって、温度調整ができるワインセラーを買ったりする必要はない。冬はしばらく外に出しておけばいいし、夏は冷蔵庫の上段に1時間ほど入れておくだけだ。
赤ワインというと、軽くフルーティーなものなら14度、コクのあるものなら18度くらいだが、これもあまり細かく気にしないことだ。冬なら室温に置いておけばいいし、夏の暑いときは、流しに水道の水をはり、ボトルを30分ほど入れておく。
〇白→白、〇白→赤、〇赤→赤、×赤→白
ワイン好きが集まって食事をするとなると、ワインが二、三本いるだろう。
アントレが野菜(たとえばゆでたアスパラガス)や魚介(たとえばホタテ貝のガスパッチョ)で、メインも魚介(たとえばヒラメのムニエル)なら、どちらにも、それぞれの料理の風味に合った白ワイン。
アントレが魚介で、メインが肉料理(たとえば牛肉のワイン煮)なら、アントレには白ワイン、メインには赤ワイン。
アントレもメインも肉を使ったものなら、どちらも赤ワイン。1本目は軽いもの、2本目にはそれよりコクのあるものを選びたい。
「白から赤ならまったく問題ないが、赤のあとに白だとすべて台なし」とワイン通がよく口にする。アントレを肉を使ったもものにし、メインを魚介料理にするとワインが赤→白になり、「すべてだい無し」パターンになってしまう。こんな場合、アントレかメインを変える方が適切だ。
赤ワインにカラフ(デキャンタ)がほしい
赤ワインは、タンニンが強く渋すぎたり、4、5年以上たったものはびんの底におりがたまっていたり、ときには酸欠のせいで不快な臭い…。こんなときにはできたらカラフ(イラスト参照)がほしい。ボトルを二日ほど立てておいてから、かたむけたカラフに、おりが入らないように静かに注ぐ。空気と触れることによって、ワインの渋みや酸みがやわらぎ、とじ込められていた本来の香りが開いていく。カラフがなかったら、のみだす1時間前に栓を抜いておこう。そうすると、赤ワインが「メルシ! 長い間息苦しかったんです」とこたえて、おいしくなってくれるだろう。
白ワイン、ロゼ(コラム参照)は、酸みがフルーティーな香りのもとなので、カラフは必要ない。(真)
Vin rosé
「ロゼなんて…」などとしばらく軽蔑され気味だったロゼワインだが、最近どんどん人気が出てきていて、新たにロゼをつくりはじめるワイン生産者が増えている。暑くなると、キリッとと冷やした辛口のロゼをアペリティフにするのも悪くないし、夏らしいアイオリやニース風サラダにもよく合う。ロゼワインは、ブドウの果汁を、果皮と種子といっしょに軽く色がつくまで短期間発酵させてから、果皮と種子をとりのぞき本格的に発酵させていく。というわけでタンニンはほとんどゼロで白ワインの仲間といっていい。魚介を使ったアントレから肉料理までロゼで通せばいい、という人もいるが、やっぱり肉料理のうまさには張り合うことはできない。一種類のワインで通したいなら、サンセールSancerreやソミュール・シャンピニーSaumur Champignyのような軽くさわやかな風味の赤にしよう。
Vin naturel
ナチュラルワイン(自然なワイン)の進出ぶりがには目を見はる。有機栽培のブドウが原料で、酵母もブドウがふくんでいるものしか使わず、酸化防止剤(亜硫酸)も加えず、フィルターもできるだけ通さないなど、生産過程で人為的なことを避けるワインのことだ。ブドウの種類も大切だが、各生産者の丁寧な作り方がワインの味づくりに大きく貢献する。AOP(原産地呼称保護)といった規格にあてはまらないワインばかりで、愛好者は、ボルドーだ、いやブルゴーニュだと言う前に、生産者の名前を指名して選ぶことが多い。生産者次第のバラエティーゆたかな風味!何回か味わっているうちにナチュラルワインのとりこになっていく。ナチュラルワイン専門店やナチュラルワインしか出さないレストランも増えていて、このブームで値段も上昇中。
「酸化防止剤(亜硫酸)を加えず」と書いたが、バクテリアによる不快な臭いが出ないように、びん詰めの際にごく少量加える生産者もいる。そうでないと、栓を抜くと、発泡していたり、どぶのような臭いがしたりするからだ。そんなときは、カラフに勢いよく注いだ方がいい。亜硫酸なしだと二日酔いしないというのは根拠がなく、のみすぎるとやはり翌日がこわい。
Baron Rouge
Adresse : 1 rue Théophile Roussel, 75012 Paris , FranceTEL : 01 43 43 14 32
アクセス : メトロ8番線Ledru Rollin駅最寄り
URL : http://lebaronrouge.net/
月17h-22h、火-金10h-14h/17h-22h、土10h-22h、日10h-16h