英国グラスゴーで開催された〈第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)〉が、11月12日までの開催予定を1日延ばし、13日に閉幕した。各メディアが地球温暖化について報じた。 ニュース週刊誌「L’Obs」は10月28日発行号で「地球温暖化はフランスをどう変化させているか」という特集記事を掲載した。
フランスでは1900年比で気温が1.7℃上昇し、2015年から毎年猛暑が到来(最高気温は2019年エロー県46℃)、地中海沿岸では干ばつと火事のリスクが上昇した。1950年来、アルプスの平均気温は2℃も上昇し、21世紀末には85~90%の氷河が消失すると予想される。海面上昇や侵食でフランスは1960~2010年に30㎢の土地を失った。夏にドイツなどを襲った洪水の記憶はまだ新しいが、都市・住宅開発の行き過ぎで、国民の25%は洪水リスクのある土地に住んでいる。また、2017~20年に干ばつが頻発し80県で水が不足するなど、水不足も懸念されている。
具体例としては、ロワール川河口地域では川の水量が減って海水が内陸部に上ってくるようになったため、農地・放牧地の塩分含有量増加に加え、海水と川の水がぶつかって濁水化し飲料水を取水できず、猛暑期の水不足が起きている。ヴォージュ山地では、3年連続の干ばつで木が弱ったため害虫が増えて針葉樹のトウヒ属を中心に枯れる木が増えた。今世紀中に東部は干ばつ日が年5日から10日に増え、雨量は10%減少と仏気象庁は予測しており、森林局も標高500m以下のモミの木は壊滅すると予想。温暖化に適応した種類の植林も今秋から始まった。仏第2の湿地帯にあるドゥ・セーヴル県では、地下水や川からも取水する巨大な農業用貯水池 (600万㎥)の建設計画に、水不足を懸念して反対する声がある。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が8月に公表した報告書では、温室効果ガスの排出量などをもとにした5つのシナリオのうち、現在の各国の目標に近い中間シナリオで、世界気温上昇が産業革命前に比べ今世紀末には2℃を超えるとする。そうなると、南仏は非常に暑くなり、北部は雨量と洪水頻度が増し、ロワール川流域やノルマンディーでは干ばつのリスクが高まる。仏気候高等評議会(HCC)も6月の報告書で、政府の温室効果ガス排出削減施策も、既存の温暖化影響に対する「適応」施策も不十分だとした。もちろんフランスだけではないが、地球温暖化が着実に進んでいて、その影響がすでに現れていることを私たちは頭に刻まなければならないだろう。(し)