「アナ」「ブリューノ」「カルメン」…。ヨーロッパの大型低気圧や高気圧には名前が付けられているが、2017年12月から、フランス気象台も大型低気圧(les tempêtes)に名前をつけることになった。これまではベルリン大学が命名した名前をヨーロッパ各地で使っていたが、フランス、スペイン、ポルトガルの気象台が連携して名前を決め、少なくともこの3カ国では使用する。「シンシア」などゲルマン系の名前が多かったが、今後はラテン系の名前が増える。
大型低気圧の名付けの歴史は、第二次世界大戦中にアメリカ気象台が、太平洋で発生した台風に女性の名前を付けるようになったのが始まり。ヨーロッパではベルリン大学の学生が名付けを提案し、1954年から同大学が、中央ヨーロッパの大型低気圧に女性名、大型高気圧に男性名を付け始めた。当初はドイツ国内だけで使われていたが、分かりやすく一般の人にも情報を伝えやすいため、次第にヨーロッパ各国メディアで使われるようになった。
しかし「悪い天気」に女性名を与え、「良い天気」に男性名を与えるのは性差別だとの批判が起こり、98年以降は偶数年は低気圧に女性名、高気圧に男性名、奇数年はその逆としている。一年につき10の頭文字がアルファベット順にリストアップされ、その頭文字の付く名前が付けられる。2002年以降は、約230ユーロで誰でも名前を応募できるようになっている。
フランス、ポルトガル、スペインの気象台が新たに始めた名付けシステムでは、名付けるのは大型低気圧だけで、3カ国の気象台が共同でアルファベット順に男女を交互にしたリストを作成。2017-18年のリストは、アナ、ブリューノ、カルメン、ダヴィッド、エマ、フェリックス、ジゼル、ユゴーなど、3カ国で広く通用している名前が並んでいる。公募はしておらず、ル・パリジャン紙によると職員の配偶者の名前が多いという。すでにアナ、ブリューノ、カルメンは誕生した。
アイルランドとイギリスの気象台も、独自の名付けシステムを昨年開始しており、フランスなど3カ国の気象台グループと提携。はじめに注意報を出した国が参加するグループの名前を、両グループが使用する。年明け早々にヨーロッパを襲った大型低気圧「Eleanorエレノア/エレアノール」は、アイルランドが初めに注意報を出したため、フランスもアイルランド・イギリスグループの名前を採用した(重)。