フランスの人間国宝、 東京へ行く。

© Philippe Chancel

ピエトロ・セミネリさん

 「人間国宝」は、日本の文部科学省が重要無形文化財の保持者に与える称号の通称だ。フランスの文化・通信省は、それに倣って1994年に「Maître d’Art」の称号を設け、124人の伝統工芸の最高技能者に与えてきた。

今、東京国立博物館で開かれている《フランス人間国宝展》では、メートル・ダールを中心に15作家の作品が展示されている。ピエトロ・セミネリさんも、そのひとりだ。

 セミネリさんは、Maître plisseur/折り布師。「折り布」というと、たいていは折り目のついた2枚の型紙の間に布を挟んで加熱し、プリーツ加工を施したものを指す。職人が減り、存続が危ぶまれる工芸品だ。彼はプリーツ布は作らないが、型紙を3Dスキャナーで読み込みデジタル化するシステムを開発した。傷みやすい紙の型紙を永久保存でき、型紙の複製も簡単になる。型紙の製図は150から200時間を要すると言われる作業だから、機械化されれば、効率が大きく上がる。

 パリ11区のアトリエを訪れると、セミネリさんは日本の展示に向けて作品を準備中だった。ごわついた質感の光沢がある苗(ミャオ)族の藍染布を使って、巨大な女王蟻のようなものを作っているのだという。黒い紙を折ってウロコのようにしたもの、麻を使った甲冑風の作品も置いてある。昨年パリ・デザインウィークの期間中、ヨージ・ヤマモトY’sの店内に展示された作品だ。様々な素材が、セミネリさんの手で折られ、ボリュームを与えられ命を吹き込まれている。

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