Musée Jean-Jacques Rousseau à Montmorency
パリから約15キロ北の町モンモランシーに、ジャン=ジャック・ルソーが数年間住んだ家が残っている。その家 (モン・ルイ館)を市が買い取り、博物館が公開されたのは1952年。以後、改修と家具・備品の蒐集を経て、18世紀当時のルソーの暮らしを彷彿させる空間が復元された。改修を終えた2階の展示スペースで、新しい企画展が9月23日から始まる。
フランス革命と人権宣言に影響を与えた哲学者ルソーは、1712年にジュネーヴで生まれた。『エミール』や『告白』などの著者で、作曲家でもある。生後すぐに母親を亡くし、10歳で父親とも別離を余儀なくされた彼は、転々と住む地を変える放浪の人生を歩んだ。
パリでディドロなど百科全書派の哲学者と親交を結び、38歳の時に論文が入賞して名声を得る。オペラ『村の占い師』はルイ15世の前で演じられたが、ルソーは国王の謁見と年金を辞退し、『人間不平等起源論』などに表される独自の政治・社会思想を深めていく。
パリの喧噪と社交界から逃れてモンモランシーで暮らした1756〜62年は、『社会契約論』『エミール』など、ルソーが主要な大作を完成させた豊かな時期である。だが、再現された台所や寝室に入ると、それがいかに慎ましい生活だったかに驚かされる。暖炉で料理を作りロウソクの灯に頼り、生計の写譜にいそしむ毎日。庇護者のリュクサンブール元帥が修繕させる前は、庭の奥の高みにある書斎には扉さえなかった。
この小部屋の窓からは遥かパリまで見渡せるが、当時、辺りは森と田園だけだった。ルソーが菩提樹の木陰で読書や訪問者との会話を楽しんだ庭には、石のテーブルとベンチが今も残り、彼が好んだツルニチニチソウが花を咲かせる。自然に溶け込んだ素朴な暮らしの中で、自らの信条「真実に人生を捧げる」を実践したのだな、と偉大な思想家の稀有な情熱に心を打たれる。
Musée J-J Rousseau, Montmorency
Adresse : 5 rue Jean-Jacques Rousseau , 95160 Montmorency , FranceTEL : 01.3964.8013
URL : http://museejjrousseau.montmorency.fr