4月19日の記者会見で、ヴェラン保健相は要介護高齢者施設(Ehpad)における家族の面会を20日から再開すると発表した。面会は高齢者への新型コロナウイルス感染を防止するために3月11日から禁じられていたが、家族との接触を絶たれた高齢者の精神状態が悪化する上、高齢者が家族に看取られずに孤独に亡くなる事態を避けたいとして、施設関係者らが以前から政府に面会再開を要望していた。ただし、高齢者本人の希望がある場合に限り、一度に家族2人までで、接触禁止という条件付きだ。
また、保健相は、13~19日の週に全国約7400ヶ所のEhpadで5万件のテストが実施された結果、Ehpadの45%に感染者が確認されたとした。19日時点でコロナによるフランスの死者総数20265人のうちEhpad等の高齢者施設で亡くなったのは38%に当たる7752人とした。
Ehpadでの感染状況の把握遅れる
Ehpadではコロナ感染による重症化・死亡が当初から懸念されていたが、その死者数が発表され始めたのは4月2日と遅かった。この日、サロモン保健総局局長は初めて「感染者は推定14638人、死亡者は少なくとも884人」と発表。それまでは、病院での重症者数と死者数が毎日発表されるなか、Ehpadの状況は全く見えなかった。
仏紙の報道によると、保健省が各Ehpadに状況報告を指示したのは3月28日になってからで、当時は各施設で症状が出た人2人だけにテストを施し、あとの人は症状が出れば「感染者」とみなすという指示だった。全施設からの状況報告は毎日あるとは限らないため、病院の場合のような正確な数字は最近まで出てこなかった。
感染の多い東部のモーゼル地方のあるEhpad(51人収容)では4月2日時点で死者2名だったが、19日までに22人に増加。4月半ばに実施された検査では入居者33人と、職員19人(52人のうち)の感染が判明した。家族の面会は3月9日から独自に禁止していたというから、検査の実施が遅れ、内部感染の拡大が防止できなかったのではないだろうか。外部から職員がウイルスを持ち込み内部感染が広がった可能性は否めない。国が高齢者施設関係者に送ったCovid-19に関する指針では、3月16日の時点でさえ職員のマスク着用を施設利用者に症状が出た場合のみに限っていたという。
入居者6.2万人、職員4万人を抱えるパリ首都圏のEhpad(約400ヵ所)でも、検査キットが不足していたため、やっと先週から1日約2500のテストが実施され始めた。こうした状況では、高齢者施設へのコロナ対策が後回しにされたと批判されても仕方がないだろう。(し)