エリザベット・ボルヌ首相が1月8日に辞任し、翌日9日、ガブリエル・アタル教育相が後任を務めることが発表された。アタル氏は34歳。第五共和政において最年少の首相が誕生した。新内閣の顔ぶれ発表が待たれる。
アタル新首相は1989年、パリの隣県オ・ド・セーヌ県クラマール市生まれ。2006年に社会党員となり、オランド政権でトゥレーヌ保健省入り。マクロン大統領が選出されるといち早く与党 En marche! に鞍替え。国民教育・青少年大臣付副大臣、首相付副大臣、政府報道官、経済・財務・産業及びデジタル主権大臣付公会計担当大臣、昨年7月から教育相。いじめ問題、イスラム教徒が着用するアバヤ禁止、制服試験導入など(それら案件自体の是非はともかく)を、優等生的にソツなくこなしてきた感がある。
ホモセクシャルであることを公言している初の首相でもあり、世論調査では内閣メンバー中でも人気の高い。とはいえ与党が議席で過半数をとれない議会の状況は変わらないから、ボルヌと同じ苦労が予想される。
昨年12月19日、紆余曲折を経て移民規制法案が成立したが、同法案には左派が猛反対した。右派や極右の提案を盛り込んだ法案に対しては、「フランス革命後からのフランス共和国の理念に反する」という声、ボルヌ氏とマクロン大統領が「社会党出身でありながら右派と極右に魂を売った」、「裏切り」などの批判が止まない。国民議会の採決では与党の3分の1が反対票を投じ、ルソー保健相は辞任、他数人の閣僚も辞意を表明するなどの事態となった。
新年になりボルヌ首相は1月8日にマクロン大統領に辞表を提出。大統領はこれを受理しボルヌ首相が辞任。20ヵ月間の在任期間では、失業保険改革、国民の猛反対にもかかわらず強行採決した年金改革、前出の移民法などを行なった。しかしその間、議会での投票なしに「49.3 強行採決」を23回行使したことから「マダム49.3」の異名をとった。(六)